ゲームシナリオ・ボイスドラマ制作Ⅱ
お題「二学期」
著:『忘れていたもの』著:小村優太
登場人物
・早乙女 あおい(さおとめ あおい)十七歳
昼夜逆転した夏休み生活を続けた結果、元の生活に戻るのが苦痛に感じてしまっている女子高校生。
・秤 瑠璃(はかり るり)十七歳
二学期に備えて夏休みは特に生活リズムを崩さず過ごして来た、あおいの同級生。
あらすじ
二学期初日。早乙女さおとめあおいは夏休みを未だに引きずっており、学校生活に再び適応できるかどうか不安を感じていた。しんどさを覚えながら教室でホームルームが始まるのを待っているあおいに、友人の秤瑠璃(はかりるり)が心配そうに声をかけて来たのだが……。
本文
○学校 あおい、瑠璃の教室
あおいM「まだ大丈夫。終わりじゃない。明日も休みだ……。そう自分に言い聞かせて震えながら過ごした夏休み最後の一週間は呆気なく終わり、二学期がやって来た」
あおい 「……はぁ……。早く帰りたい」
瑠璃 「あれ、あおい大丈夫? なんか暗くない?」
SE おあい、驚いて椅子を揺らす音
あおい 「わっ……。なんだ瑠璃か」
瑠璃 「具合でも悪いの? それとも、現実逃避中?」
あおい 「うるさいなぁ……。そりゃ、自堕落に過ごしてきた夏休みが終わって、急に生活リズムを整えて、いざ登校ってなれば逃げたくもなるよ」
瑠璃 「あはは。生活リズムが狂ったのは自業自得じゃないの?」
あおい 「……今の私は正論じゃなくて、同情が欲しい」
瑠璃 「何それ? ……まぁ、わからないでもないけどね」
あおい 「……そう言う割には全然辛そうに見えないけど?」
瑠璃 「だって、夏休みって無駄に長くない? それに家に居たって案外退屈じゃん。バイトだったり、遊んだりとかは勿論あったけどさ。まぁそのうち嫌でもまた学校生活に慣れるよ」
あおい 「はぁ……違うよ」
瑠璃 「違うって、何が?」
あおい 「だって来年は受験あるし、今年はゆっくり出来る最後の夏休みだったんだよ?」
瑠璃 「そう言われればまぁ。……でも大学生の方がもっと暇じゃない?」
あおい 「そんな先の事知らない。あぁ、何か学校側の手違いがあって、あともう一か月は夏休みでしたとかないかな……」
瑠璃 「往生際が悪いぞ」
あおい 「な、夏休み……」
瑠璃 「夏休みは終わりました」
あおい 「そんなぁ……」
瑠璃 「……ふふ」
あおい 「な、何笑ってるの?」
瑠璃 「いや、ごめんね。本当はさ、私もちょっと朝起きてから、さっきまでしんどかったんだよね」
あおい 「え?」
瑠璃 「なんか、漠然と行きたくないなぁ……みたいなね。いざ行っちゃえばどうって事はないんだけど、しんどいみたいな」
あおい 「あ……うん。すごくわかる」
瑠璃 「でもあおいと話していたら、学校って楽しい場所なんだっていうのを思い出して来たっていうか。なんだろ、二学期への不安が吹き飛んじゃった」
あおい 「そ、そうだったんだ……」
瑠璃 「うん。だから、ありがとね」
あおい 「あ、ありがとうって、そんな……」
瑠璃 「二二学期は二学期で色々な行事があると思うしさ。一緒に楽しい学校生活にしていこうよ」
あおい 「……なんか、友達に面と向かってそういう風に言われると照れちゃうな……。でも、ありがとうね」
あおいM「友達と過ごす学校生活の楽しさを私は忘れていた。夜行性になった生活リズムを今から直すのは苦行だが、夏休みから二学期にバトンタッチするのは悪い事じゃない」
瑠璃 「あ、今日ホームルームだけだしせっかくだから終わったらどっか遊びに行こうよ!」
あおい 「え、行きたい!」
瑠璃 「じゃあ決まりだね」
あおい 「うんっ!」
瑠璃 「ふふ、私の知ってるあおいに戻った」
あおい 「え?」
瑠璃 「いや、さっきまで凄い沈んでたからさ」
あおい 「あ、あははは……」
瑠璃 「世話のかかる奴め」
SE チャイム キーンコーンカーンコーン
あおい 「そろそろ先生来るかな」
瑠璃 「そうだね……って。あれ? 何出してるの?」
あおい 「え? 何って課題だけど」
瑠璃 「……え? ……課題?」
あおい 「あれ、もしかして瑠璃忘れた?」
瑠璃 「いや」
あおい 「いや……?」
瑠璃 「存在そのものを忘れていた」
あおい 「え? 課題全然やってないの!?」
瑠璃 「……うん」
あおい 「えぇ……。課題の回収今日だよ?」
瑠璃 「な、何かの間違いでもう一か月だけ夏休み伸びないかな……」
あおい 「往生際が悪いぞ」
瑠璃 「な、夏休み……」
あおい 「夏休みは終わりました」
瑠璃 「そんなぁ……。あの、放課後遊ぶ予定を変更して課題手伝ってくれない……?」
あおい 「……世話のかかる奴め」
(了)