周期的に起きる魔族の侵攻で幾度も滅亡の危機に瀕し、魔王の討伐者が勇者と呼ばれる世界。勇者の武器は持ち主と波長の合う者へ力を与える聖遺物となるが、人々は聖遺物を兵器として認め、その由来を蔑ろにしていた。
ある日、各地に点在する聖遺物の四つが、魔族の生き残り、魔女エルザに強奪される。同時期、辺境に住む少年カロンは、襲来した魔獣から家族を守る際、同郷の勇者が遺した聖遺物「盾」に適合。村を守ると共に、エルザを危険視した国王の勅令で討伐隊へ呼ばれる。彼のほかに適合者は「杖」の少女ミランダのみ。臆病なカロンは戦力不足に戸惑うが、聖遺物が利用されれば聖遺物なくしては勝てない。二人の適合者は、王国騎士ディンス率いる騎士団と共に魔女討伐の旅へと出る事になる。
襲い来る魔獣を退けながら、エルザの住処を目指す一行。カロンは「杖」で自在に魔法を操るミランダに対して、自分が無力だと悩むようになる。剣術をディンスから教わるが付け焼き刃に他ならず、悩み続ける彼だったが、全ての聖遺物は勇者が用いた武器。カロンは自分が「盾」の勇者について何も知らない事に気付き、興味を抱き始める。一方、彼と親交を望むミランダは、臆病ながら勇者に選ばれた名誉に報いようと無理に奮っていると告白。同じく臆病なカロンが盾役を買って出る事が安心に繋がっていると感謝を示し、カロンは仲間を守る事こそが役目だと考え奮起する。
出立から数日後。魔力を以て「鎧」の聖遺物と強引に適合したエルザが、討伐者の排除に現れる。桁外れの力に一行が圧倒される中、カロンは盾の役目すら果たせなかったと狼狽。隙を突かれた結果ディンスに庇われてしまう。だが狼狽えるカロンに対しディンスは、勇者にも不可能があると断言。出来る限りの事を成せと激励されたカロンは、エルザの猛攻に耐えて戦うミランダを守り、彼女との連携でエルザを退ける事に成功する。
奪われた聖遺物は「鎧」「冠」「剣」「本」の四つ。討伐隊を襲った魔獣は「本」で使役されており、放置すればエルザに人間が滅ぼされる結果を招く。先の襲撃で騎士団は戦力を大きく削がれたが、時間に余裕はない。カロンら討伐隊は残った戦力で進撃を強行し、彼女の拠点へと辿り着く。だがエルザは既に「冠」「剣」とも適合を終えており、完全な武装で一行を迎撃。魔族が聖遺物を利用する事を咎められた彼女は、人間が勇者の偉業を蔑ろにする事へ憤り、自身の目的を明かすのだった。
先代魔王の配下だったエルザは、人間との共生を望む思想を理由に追放された際、後に勇者となる男に助けられ、彼と共に魔王討伐を成し遂げていた。だが人々は魔族との共闘を黒歴史とし、エルザを守る為に勇者は隠遁。彼の死後、聖遺物を望み通りに故郷へ届けたエルザは、勇者の功績を捻じ曲げて聖遺物の力に固執する人々への復讐を計画していた。その勇者こそが「盾」の勇者であり、エルザは由来も知らずに聖遺物を扱うカロンらに激昂。「冠」で騎士団を洗脳し、同士討ちを強制する。だが自傷で自我を保ったディンスに導かれたカロンは、エルザに直接狙われたミランダを庇護。彼はエルザの言い分に理解を示しつつ、勇者が守った世界を守り続ける為に対峙する。
聖遺物を駆使するエルザの猛攻を防ぎ続け、ミランダが反撃に出る時間を稼ぐカロン。彼はふと、エルザが最強と名高い「剣」を使わぬ事を疑問に思い、彼女の真意を察する。「剣」を「盾」で防げば、互いの聖遺物は力が相殺し砕け散る。それは「盾」の勇者を想うエルザが最も望まぬ展開だった。更にエルザは「盾」が持ち出された事にも憤り、彼女が「盾」だけは奪う気がなかったと判明。激闘の末にエルザは「杖」の奥義を受けて敗北するが、強制適合の反動で暴走した聖遺物に殺されるエルザを前に、カロンはエルザを助ける事を選択する。
「盾」が彼を選んだのは、彼がエルザの凶行を止めて救い出せる正義の持ち主だったから。それが勇者の望みと理解したカロンは「盾」を代償にエルザを守り、彼と勇者を重ねたエルザは戦意喪失。聖遺物を巡る騒動は終息する。その後、ディンスの図らいでエルザは極刑を免れ、エルザの訴えに感化されたミランダはカロンと共に正しい歴史の周知に尽力。後に新たな魔王が現れるが、エルザとの戦いで生まれた新たな聖遺物「盾」を携えて、カロンはエルザ、ミランダと共に戦いへ挑むのだった。