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ゲームシナリオボイスドラマ制作
テーマ「4人の登場人物を用いた会話劇」
『三人がいちばん!』著:空空

本文
○美術室
先生 「それでは今から二人組を作ってお互いの似顔絵を描いてもらいます」
正輝 「えー先生いいんですか? 俺余裕で賞とか取っちゃいますけど」
先生 「おおっ。それは楽しみですね、期待していますよ」
奏  「アホ正輝(まさき)が(小声)」
安和 「 二人組かぁ、誰誘おうかな」
先生 「余った人は先生を描いてもらいます。それでは相手を探し始めてくださいね」
安和 「うーんどうするか……あ」
SE 複数人が走る足音
奏  「安和(あんな)一緒に組もー!」
正輝 「い~や安和俺だ俺!」
安和 「うるさっ」
奏  「は? あたしとやるに決まってんじゃん馬鹿なの?」
正輝 「何で奏(かなで)みたいな野蛮な奴と組むんだよ。どう考えても俺だろうがっ」
安和 「あーあ こうなると思ったよ」
奏  「だってこういう時は幼なじみと組むのがベストじゃん?」
正輝 「いや俺も幼なじみだし」
奏  「えーそうだっけ、記憶にないわ~」
正輝 「コイツっ!」
安和 「あの~二人とも? 私せっかくだから別の子と組みたいんだけどな~」
奏  「それは駄目」
正輝 「うん ダメ」
安和 「何でそこだけは意見合うのよ……」
先生 「何やら騒がしいですね、まだ決まりませんか?」
安和 「あ、すみません先生。今どっちが組むかで揉められてて」
先生 「なら今どちらか決めてください。余った方は先生が預かりますので」
安和 「いやそれむしろ私が先生と組みたいんですけど」
先生 「それだと両方から恨まれるでしょう」
安和 「うっ 否定できない……じゃあ正輝かな」
正輝 「お、おっっしゃあ‼ やっぱ俺ら両おも、」
奏  「は、何でよ!」
先生 「いい加減諦めなさい! 描いてる時間無くなりますよ、全く」
奏  「……もういい」
SE チャイムの音
正輝 「やっと昼だー! 飯行こうぜ安和」
安和 「うん。あれ奏は? いつもはすぐ飛んでくるのに」
正輝 「アイツまだ拗ねてんのか。まあ仕方ないかもな! だって俺たちのあんな熱々な関係を見ちまったら、」
安和 「大丈夫かなぁ。奏」
正輝 「え無視?」
〇通学路
SE 雀の鳴き声
SE 車の通りすぎる音
安和 「あ、奏。おはよう、昨日さ」
奏  「……あたし先行くから」
安和 「え、ちょっと!」
安和 「奏……」
〇教室
SE がやつく音
SE 扉の開く音
安和 「いた、よかった正輝。ちょっといい」
正輝 「ん。なになに、告白?」
安和 「相談があるんだけどさ」
正輝 「あ はい。……どうした」
安和 「さっき、来る途中に奏と会ったんだけど、まだ何か気にしてるみたいで。早く謝った方がいいのかな」
正輝 「なーにを謝るんだよ、俺を選んだことをか? 大体何で選んでくれたんだ」
安和 「それは……」
SE 足音
奏  「あ、んんっ(咳払い)。トイレトイレ」
正輝 「待ったぁ」
奏  「何」
正輝 「安和が二人で話したいんだってよ。だから俺が代わりにトイレ行ってきてやっから」
SE 椅子を引く音
SE 足音
奏  「なによそれ意味ないし」
安和 「……奏、ごめんね?」
奏  「……何が?」
安和 「その、昨日の授業で正輝を選んだこと、怒ってるんでしょ」
奏  「……違うし」
安和 「ん?」
奏  「だって、」
奏  「だって二人が付き合ってたこと、私に隠してたからさ」
安和 「……うん? え、何の話」
奏  「とぼけたって無駄よ、普通選ばないもんあの状況で」
奏  「アンタらが付き合ってない限りは、ね!」
安和 「いやそれだけで?! 全然違うわ!」
安和 「私は正輝がその、画伯だから仕方なく選んだってだけで」
奏  「画伯って、最初に言ってた賞とれるとかのこと? あんなのただの勘違いでしょ」
安和 「そうよだからなの。正輝は常人には理解できないって意味の方の画伯なのよ」
奏  「あーつまり、めちゃくちゃ下手ってこと?」
安和 「まあそういうこと。だからねほら、先生に申し訳ないなって……ね?」
正輝 「そ、そういうことだったのか……」
奏  「うわ、いつの間に。トイレ行ったんじゃなかったのアンタ」
正輝 「俺は、俺はてっきりやっと振り向いてくれたのかと」
安和 「断じて違います」
奏  「何だ~それならそうと言ってくれればよかったのに。一日無駄にしちゃったじゃんっ」
安和 「ちょっと、抱き着くな」
正輝 「お、おいずりぃぞ! うぅ……」
奏  「ふん、振られた男は黙って見てなよ」
正輝 「キィーゆるさんぞお前ら! 俺の純情な気持ちをもてあそびやがって!」
安和 「あぁもう朝から騒ぐなってば!」
奏  「あははっ、やっぱこうじゃないとねっ!」

(了)