○ファミレス・店内
店員「いらっしゃいませ~。何名様でしょうか?」
男性客「三人で」
店員「あらちの窓側のお席へどうぞ」
志乃「ふふ、三人で遊ぶのは久しぶりだけど、なんだか久しぶりな感じがしないね。学校で会える瑛太くんはともかく、美好ちゃんとは二人で会う機会だって少ないのに」
美好「高校に上がるまでは毎日のように三人で遊んでいたからな。むしろ私としては、こうして三人揃ってようやく日常の気分だよ」
瑛太「美好だけ違う学校行くからそうなるんだよ。まあ、頭良い癖に俺たちと同じバカ高校に来られてもそれはそれで困るけどな」
志乃「たまには今日みたいに幼馴染三人で集まりたいよね。男の子が瑛太くんだけだから、ちょっと肩身狭いかもしれないけど……」
瑛太「構わねぇよ、遠慮のある仲でもあるまい。さて、デザートも食ったしそろそろ出るか?」
志乃「あ、じゃあその前にちょっとお手洗い」
美好「なら私が会計を済ませておこう。清算は後でゆっくりすれば良い」
志乃「分かった。じゃあ、ちょっと待ってて」
SE:小走りの足音
美好「……さて、瑛太」
瑛太「なんだ、美好」
美好「志乃は……頬に生クリームが付いてても、それに気付いてなくても、可愛いな……」
瑛太「ああ、むしろ魅力が増したかもしれん」
美好「だよなぁ、そうだよなぁ! ああっ、くそ! 今の私には志乃の可愛さが刺激的すぎる! 正直なところ、お持ち帰りしたい!」
SE:机を叩く音&食器の音
瑛太「それは駄目だ。約束を忘れたのか?」
美好「決して志乃を独占してはいけない。小学生の頃に二人で結んだ約束だったな。しかし瑛太、お前がそれを言うのはずるくないか?」
瑛太「ま、否定はしねぇよ。平日は必然的に俺が志乃の一番近くに居るんだからな」
美好「くぅ、どうして私は別の学校なんて受験してしまったんだ! しかし、志乃は私を頭が良いと褒めてくれたんだ。その評価へ報いる為にはこうするしかなかった……!」
瑛太「ふふふ、俺だって自分から約束を破る男じゃねぇさ。中学を卒業してから今日までに撮影した志乃の写真、共有フォルダに保存しておいたぜ……!」
美好「瑛太……! お前は最高に良い男だ!」
瑛太「はは、よせやい。俺とお前の仲だろ」
SE:小走りの足音
志乃「お待たせ~、って、あれ? 美好ちゃん、まだ会計してなかったの?」
美好「ああ、ごめん。鞄の中で財布を見失ってしまってな。瑛太に探すのを手伝ってもらってたんだ。大丈夫、ちょうど見つかったよ」
志乃「そっか。じゃあ会計お願いしまーす」
美好「はいよ、任された。二人は先に店を出ていてくれ」
瑛太「了解、っと」
店員「ありがとうございましたー」
SE:ドアベル
〇ファミレス・店外
志乃「ねえ瑛太くん。さっきは美好ちゃんと何の話をしてたの? なんだか二人で盛り上がってたみたいだけど……」
瑛太「志乃はいつ見ても可愛いって話だよ」
志乃「もう、そうやって誤魔化したりしてぇ。そういう口説き文句は私じゃなくて、美好ちゃんに使ってあげないと!」
瑛太「……え? そりゃまた、なんで」
志乃「ふふん、私が気づかないとでも思ってたの? 瑛太くんってば、中学の時は授業中にいつも美好ちゃんの方を見てたでしょ。あれって、そういうことだよね?」
瑛太「あー……うん、まあ、確かに志乃から見るとそう見えるかもなぁ……」
志乃「応援するよ! 瑛太くんは気付いてないかもしれないけど、実は美好ちゃんも結構瑛太くんの方を見てたりしたし、脈ありかも」
美好「お待たせ」
志乃「ひゃん!」
美好「なんだその声」
志乃「な、ななな何でもないよ? そうだ、美好ちゃんにお金渡さないと……」
瑛太「後で良いんじゃねぇの? そうだ、カラオケでも行こうぜ。また二人のデュエットを聴かせてくれよ」
美好「なるほど、名案だ。お前も少しは歌えるようになったんだろうな?」
瑛太「ふん、いつまでも音痴な俺じゃないぜ」
志乃「じゃあ、次はカラオケで決定だね」
美好「(声を潜めて)ところで瑛太。さっき志乃と何を話していたんだ?」
瑛太「(声を潜めて)後で話すさ。くくっ、聞けばお前も笑いを堪えるのが辛いだろうなぁ」
志乃「む、ひそひそ話は感じが悪いかも」
瑛太「おっと悪い。ちょっと下らない話をな」
美好「まあ、折角久しぶりに集まっているんだ。空気を悪くするようなことはよしておこう」
瑛太「そうだな。折角のデートだからな」
志乃「ま、デートなんて大胆。でも三人でするデートなんて聞いたことがないけど」
瑛太「いやいや、三人じゃなきゃ出来ねぇよ」
美好「ああ、抜け駆けは許されないからな」
志乃「ふぅん? ま、楽しければ良いか!」
【了】