ゲームシナリオ・ボイスドラマ制作 お題「浴衣 夏祭り」
『乙女の逆襲』 著:霜月瑠璃子
登場人物
・降谷 葵 (ふるや あおい) 十六歳
双子の姉。高校一年生。
常に優しい。頼りがいがあり、周りからとても信頼されている。表の顔は仏のようだが、腹黒な部分もあり。怒ると怖い。
クラスメイトである足立颯(あだち そう)のことが好きで、夏祭りに誘い告白をしようとしている。
・降谷 茜 (ふるや あかね) 十六歳
双子の妹。高校一年生。
容姿端麗。明るい振る舞いで、友達が多い。情報通。
双子の姉である葵に懐き、彼女の恋を応援している。が、実は自分自身が足立颯に声をかけられ、ちょっかいをかけられたことがあった。それに加えて相手に彼女がいることを知っている為、葵に事実を話そうか悩んでいる。
あらすじ
夏祭り当日。クラスメイトの足立に告白することを決心した葵は、双子の妹、茜と一緒に会場へ向かっていた。
会場へ向かいながら、告白に緊張している葵を励ます茜だったが、足立の本性を知っていた為ぎこちなくなってしまう。
葵は様子がおかしい茜を心配し、姉思いの茜は悩んだ末、葵に全てを打ち明けた。
足立の本性を知った葵は、好きな人が最低な野郎だったという事実に落ち込む様子はなく、足立への復讐を決意。計画を練り始める。
そして、足立を見つけた葵は、「もうそれバレるだろ」レベルの演技(?)で足立の元へと駆け寄っていく。
茜はそんな葵の姿を見ながら、「姉を怒らせてはいけない」と実感しつつ、ただ静かに見守った。
本文
〇夏祭り会場へ向かう道 (夕方)
葵「ねぇ茜……私の浴衣、変じゃない?」
茜「超似合ってるし、めっちゃ可愛いから大丈夫」
葵「髪型、変になったりしてない?」
茜「ばっちりだよ」
葵「汗かいてメイク崩れてたり……」
茜「ねぇ、もうそれ聞くの十回目だし、大丈夫だから落ち着きなよ」
葵「だって、待ち合わせまで後十分だよ? 緊張して落ち着かない……」
茜「緊張なら一昨日からしてるじゃん」
葵「あの足立君と一緒に夏祭りだよ? それに今日は、ちゃんと告白するって決めたし……」
茜「……本当にするの?」
葵「え?」
茜「いやっ……あの、別に大した意味はないけどさ。本当に告白するのかなぁって気になって」
葵「うん……。するけど、なんで?」
茜「なんでもない……けど」
葵「ほんとに? 最近の茜、足立君の話してるときなんか変だよ?」
茜「変とは失礼な。そんなことないでしょ」
葵「そんなことあるの。何かあるならちゃんと話して」
茜「別に何もないって。そんな怖い顔してみないでよ」
葵「私は姉として、妹を心配しているだけです」
茜「私たち双子なんだから姉も妹もなくない?」
葵「いいの。私が姉であることは変わりないんだから」
茜「へいへい」
葵「……それで? 我が妹は何を隠しているのかな?」
茜「……葵が足立を夏祭りに誘ったときあったでしょ? あの少し後、足立から声かけられたんだよね」
葵「茜が? なんて?」
茜「……付き合ってくれないかって」
葵「え……」
茜「もちろん断ったよ! でもあいつ、私以外の子にも声かけてたらしいし、それに……」
葵「それに?」
茜「……あいつ、彼女いるの」
葵「……ちょっとまってよ。なんの冗談? だって、足立君は彼女いないって」
茜「ごめん。本当はもっと前に言おうと思ったんだけど……」
葵「信じられない……」
茜「……そうだよね」
葵「だって、そんな……?でしょ?」
茜「……っ葵、ほんとにごめ……」
葵「信じられない! あいつ、茜にまで手を出そうとしてたなんて!」
茜「……へ?」
葵「え、じゃあ何? 彼女がいながら、茜や他の女の子たちに声かけて、手ぇだそうとしてたってこと? まじでありえない。クズ過ぎる。」
茜「あ、葵?」
葵「私の大事な妹になんてことしてくれてんのよ。こんの浮気男め!」
茜「葵さーん?」
葵「ねぇ茜、本当に大丈夫だったの? あいつに何か変なことされたりしてない?」
茜「いや、声かけられて終わったけど……」
葵「ほんとに? ほんとーにそれだけ?」
茜「本当だって! てか、私の事よりまず自分の事考えなよ」
葵「何で?」
茜「いやだって、葵さっきまで足立に告白しようとしてたじゃん……」
葵「するわけないでしょあんなクズ野郎に! あんな奴に告白しようとしてた自分が恥ずかしいわ」
茜「……結構好きになってたくせに」
葵「あんなのは取り消しよ、取り消し!」
茜「そうですか……」
葵「あー腹立つ。仕返ししてやらないと気が済まない」
茜「あの……すごいタイミング悪くて申し訳ないけど、足立あそこにいるよ」
葵「……そう。のこのことやって来たってわけね。今に見てなさいよ。後悔させてやるんだから……」
茜「顔怖ぁ……」
葵「てことで、私行ってくるから。茜、後で合流ね」
茜「あぁ……うん。わかった」
葵「足立く~ん! うっふふ~。お・ま・た・せー」
茜「……足立、どんまい」
(了)