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唐突だが、この世には、重力というものが存在する。そして、その重力は、地球上のものに容赦なく重さを発生させる。だから、大きな物を動かすのには、力が必要になる。新幹線に莫大な電力と強力なエンジンが、必要なのもそのせいだろう。
子供の頃見ていた、特撮に出てくる巨大なヒーローや、空飛ぶ巨大ロボットなんて物は、まやかしに過ぎない、しかし、子供の頃はそのヒーロたちに心揺さぶられ、そして、ああなりたいと憧れた・・・でも、それは全てなかったことにしてほしい。

あたりを真っ暗に、時間が染めていく。時間という絵具を流し込んだキャンバスが静寂の色に染まっていく。訳ないだろ、どう考えてもおかしかった。まだ、昼の二時だぞ、おかしいだろ。昼間の明るいはずの外の風景は、姿を消していた。それどころか、人や車が、姿を消していた。

そして、衝撃としてやつは、僕の前に姿を現した。巨大な人型ロボットが、僕を見下ろしていたのだ。10mは、あるだろうか・・・いや・・・15m?細かい数字など気にできるような状態では、なかった。
「君に会いに来た。」その巨大な人型ロボットは、声を発したのだ。黙ってろという言葉を今日ほど使いたくなることはないだろう。ただでさえ、驚いているのにあげく話しかけてきたのだ。
「なん・なんだよ!」佐藤は、逃げようと一瞬思ったが、そこら中真っ暗で、さらに、人も車を姿を消した町のどこに逃げればいいか分からなかった。
「君は、この世を破滅から救い出すことができる。」
「知らないよそんなの!」真っ当すぎるすぎる回答だった。遠くら、縞模様の人型の巨大な生き物も現れた。時間が、停止した。訳ではなかったが、遠くにいたはずの縞模様の生き物が、突然目の前に現れた。縞模様の怪獣の頭の上には、光るリングが、あった。

モニターで、真っ暗な空間で、怪獣NO55と八咫烏の争いを見ていた。対怪獣対策に設置された組織高度防衛局の指令室が、騒然となる。
「あれは?」
「人です!」
「何で人が・・・。」

NO55と巨大ロボットは、向かい合い棒立ちになる。佐藤は、慌てて逃げだそうとする。辺り一面が、白くなった。
〈抜けたか…?〉佐藤の希望は、一瞬で打ち砕かれる。今度は、あまりにも白すぎたのだ辺り一面真っ白で、闇が、完全に消えてしまった。

「君は一体・・・・。そうか君が到達者なんだね。」真っ白な服を着た男性が、目の前に立っていた。
「どうでもいいですから。ここはどこなんですか?どうやったらここから出られるんですか?」
「出らるとか、出られないとかではないんだ。ここには、これる人は、来れるし、来れない人は、永遠に来られないんだ。」
「そんなことどうでもいいんです。ここから出してくださいよ!」
「君は、この世界についてどうもう思う?」
「お前誰だよ!とっと出せよ!誰か!」佐藤は、疑問が怒りに代わり、徐々に大声を出して暴れだす。
「そうか・・・君は、到達者の中でもまだ未熟者か・・・。でも、まだこれから見込みがあるだろう・・・。」
「お前なんだよ!」

縞模様の怪獣が、大爆発を起こす。
「何が起きたの?」
「エネルギー反応消失。異邦人の反応消えました・・・・。」指令室のスタッフたちもあっけにとられる。モニターには、激しい閃光と、高度防衛局の対異邦人機が、映されている。
「勝った?の?」終始、異邦人と呼ばれる怪獣とその異邦人との決戦用につくられた巨大ロボットは、対面で棒立ちしているだけだった。全く戦闘をおこなった形跡もなく突然異邦人が、爆発したので指令室のメンバーは、あっけにとられる。
「空間回復します!」指令室に安堵の声が、漏れる。異邦人と巨大ロボットが、包まれていた真っ黒な空間が、姿を消す。
「あの少年は、一体・・・。」

「殺してやる殺してやる皆殺しにしてやる!死ね死ね死ね。契約違反のそ・・・学会は、滅びろ!人殺しは今すぐに消え去れ!クソったれ!」
「あっ!」悪夢にうなされ佐藤が、目を覚ます。悪夢というには、あまりにも現実味が、あった。悪夢というよりかは、この世界の形而上学的意味での、真理を原型のままで見せられた胸中のカオスそのものだった。しかし、これはあくまで真理であって荒唐無稽という意味ではなかった。ここ最近この悪夢に佐藤は、うなされていた。いつごろからうなされているかは、記憶に残っていなかった。佐藤とっては、そのことが、よりいっそ恐怖を強めるもののとなった。これは、ひょっとして忘却ではなくて、既にあるものなのではないかという恐怖は、凄まじいものがあった。

佐藤は、南都に向けて急行に乗っていた。目的地は、南都にある高度防衛局だった。高度防衛省局は、宇宙もしくは、この世のあらゆるところ、または、我々が存在を認知できない異世界や異概念から現れた存在らしきものを異邦人と呼び、その異邦人に対応するために生まれたのが、高度防衛局通称高防だ。佐藤の元に南都政府から浅緋紙が、届いていたことが、高防に向かっている理由だった。浅緋紙は、政府から送らせてくる高防への協力要請書類。佐藤は、国のために何かするということことには、激しい嫌悪感を抱いていた。何故ならそれは、人間が人間的であることをやめ国家的機械になることを意味したからだ。個を維持するということは、人の尊厳を守ることを意味しており、それは、佐藤も同じだった。しかし、佐藤がうなされている悪夢の中に高防が出てきた記憶がほんのり残っている以上確かめずにはいられなかった。

佐藤は、南都の駅に降り立つ。
「南都、南都です。お手荷物お忘れないようご注意ください。平安京へお向かいの方は、向かいの4番ホームよりお乗り換えです。」
「4番線を電車が通過します。ご注意ください。」複々線のバラス軌道を真っ黒な特急が、通過していく。構内には、航空機の爆音を爽やかにした通過音が、流れる。
南都駅に着いた佐藤は、駅で迎えに来てくれるはずの、高防の職員を待っていた。ここ最近頻繫する人身事故のせいで今日も電車は、遅延していた。佐藤は、駅に到着して、高防の職員を待っていた。
<周KAREN・・・。>佐藤は、事前に貰っていた名刺を眺める。
【南都高度防衛省 周KAREN。】名刺には、そう書かれていた。

佐藤の待つ、駅に隣接するバス停目がけて、高速道路の110キロ区間と勘違いしているのは、ないかと疑いたくなるスポーツカーが、ドリフトをバス停にぶち込んで来る。バス停に横付けされたスポーツーカーからスーツを着た女性が、降り傍で呆然と眺めていた高校生ぐらいの男性に声をかけた後しきりに、謝り・・・。

佐藤の携帯が、鳴る。
「もしもし、高防の周です。佐藤さんもう駅に着きました?」勢い余って携帯から飛び出しそうな元気のある声が、携帯から聞こえて来る。
「あ・はい。もう着いています。」
「あ、分かった。分かった。」佐藤を見つけた周が、元気よく手を振る。
周が、駆け寄って来る。周りの注目を浴び佐藤は、うつむく。
「ごめん、遅くなって。」笑顔と謝罪の表情を足して割った表情で謝られた。
「あ、いえ、大丈夫です。」
「はじめまして、周です。高防で総合職をしています。よろしくね。」媚びを決して売るわけではないが、きつめで近寄りがたい女性というわけでなかった。そして、自己紹介と共に放たれたウウィンクもまた、男性に性的な意味で媚びたものではなかったが、男性は、勝手に惚れ込みそうだった。
「あ・はい。」

佐藤は、車に乗せられて高防に向かう。
「本当にありがとうね。協力してくれて。」
「いえ、興味があったので。」
「でも、すごいことよ。来てくれるだけでも嬉しいは。」佐藤は、運転しながら話かけてくる周の生足が、気になってしかたなかった。スカートから見える透き通った足に視線が、行ってしまい結局、佐藤は、窓の外を見ながら周の話に相槌を打っていた。

高防にすると高速エレベーターで一気に下層階へと降りて行った。鉄製で出来た通路を歩いて行くと、途中途中で、黄色いヘルメットを着用した作業着の男性が、通り過ぎていく。
「うっ!」佐藤は、声にならない声を発する前にその覇気に押されて声を発することが、出来なかった。
「これが、あなたが乗る・・・。いや、乗ることになるかもしれないE9系八咫烏125号よ。」佐藤前に姿を現したのは、人型の巨大なロボットだった。鋭い目に鋭い歯鬼や恐竜を綺想させるものだった。今にもこの世あらゆる存在・概念をかみ砕かんばかりの迫力があった。
「すごい・・・。」佐藤は、八咫烏と目が合いその目が離せなかった。起動していないにもかかわらずその目は生きていた。

地下で八咫烏を見学した後、再度地下から地上に戻り、吹き抜けになっている官公庁には似合わないお洒落なロビーを通り、小さな会議室に通された。
「じゃあ、改めまして、高防総合職の周です。よろしくお願いします。さっそく、高防での仕事と、その仕事から得られる賞与についてお話させてもらいます。」椅子に両者が、座るとタブレット端末を取り出し、佐藤の前に差し出し話を切り出した。
「あ・はい。」佐藤もかしこまって話を聞く。
「そんな、緊張しなくていいから。」笑顔で、緊張している佐藤を気遣う。周が、佐藤にタブレットを見せながら説明を始める。
「私たち高防は、異邦人対策と作られました。そして、先ほど見てもらった機体、八咫烏などを使い異邦人を捕獲もしくは、撃破してきました。しかし、異邦人対策で作られた機体は、適応できる人が、限られているため誰でも乗れるわけでは、ありません。そこで、適合者に対して協力を要請させてもらっています。協力者には、その期間や活躍に応じて報奨金をお渡しさせていただきます。」周は、さらに、報奨金の詳細説明を始めた。
「そして、佐藤さんにお願いしたいのが、八咫烏に搭乗しての異邦人との戦闘です。」
「私は、あれに乗れば・・・いいんですね。」
「もちろん、急にとは、言わない少しの間訓練してもらってからよ。」
「やって・・・。いや、まずは訓練を。」佐藤は、一瞬その場の勢いで『はい。』といいかけたが、恐怖感から
「そうね。ありがと。」
「い・いいえ。」

佐藤は、指示された学校に転校することとなる。学校は、全面ガラス張りのビルで青空を学生時代の一瞬を光とともに反射していた。
〈!〉教室のドアを開くとそこには理性を超えた本能の世界が、広がっていた。ところ狭しとびっしり敷き詰められたJK。
「え?男?」
「え?男性って適性が、ないって・・・。」
「いや、例外もあるって聞いたよ。」教室は、ざわついていたが、それ以上に佐藤の心は、ざわついていた。
「はい、しずかにしろよ。転校生を紹介するぞ。」JKの顔が、一斉に佐藤の方を見る。佐藤は、目のやり場に困りうつむく。
「じゃあ、佐藤君自己紹介を。」子声で教師が、佐藤に耳打ちする。
「はい、佐藤明です。よろしくお願いします。」人が、人生のうちで最も目が、綺麗な18歳以下の目が佐藤から目を離さない。
「ということで、仲良くしてやってくれ。」

一限目の時間になり巨大な液晶画面に教師が、映り講義が、始まる。映像授業だ。成績は、出席率と電子ファイルのノート提出とテストの点数で決められる。出席は、カードを端末処理で記録している。
「ねえ、どこから来たの?」真っ赤な固い果物をたたき割った爽やかを感じさせる隣の彼女が、仕掛けてきた。その積極性に佐藤の心は、恋焦がれる。
「な・名張から・・・。」
「名張ってどこ?」
「南都の隣・・に・・。」
「へぇじゃあ近いんだ。」
「一応。」
「女ばっかで驚いたでしょ。」
「そうだね。大夫。」
「ははは、でもここだとモテるしいいんじゃない。」
「え・。」佐藤が、返答に困っているとさらに、別の女子生徒が、話に割って入ってくる。
「さっそく、手を出そうとしてる。節操ありませんわね。」その高貴さは、髪から全身まで包み込んだ女性が、一番最初に話しかけてきた女性に喧嘩を売る。
「へ~、一週間前から学校中の生徒に転校性のことを聞いていたどこかの誰かさんが、それを言うんだ。」それは、事実だった。高貴な彼女は、本能のままに校舎は、這いずりまわり、転校生の情報をむさぼっていた。
「そ・そんなことありませんは、私が、そんなことす・するわけないでしょ!佐藤さんこの女だけは、止めときなさい。暴力的で、馬鹿で馬鹿で馬鹿。なにもいいことが、ありませんは。」
「あのね。あんたは、成績が、いいだけでエロいことで頭がいっぱいの馬鹿でしょ!」
「なんですって!」
「はいはい。そこまで。佐藤君部活は、どうするつもり?」コピペしたような童顔の双子が、喧嘩している二人をなだめる。
「二次研究会!」
「生徒会!」
「いや・・・。僕は部活は、ちょっと・・・。」
「あ~あ、二人と断られちゃった。」
「断られちゃった。」双子が、二人をからかう。
「「あんあたたちは、黙ってないさ!」」
「「怒られたー!」双子は、怒られたが、笑っていた。収拾がつかなくなってきたのでこのへんにしておきましょう。

佐藤は、学校から支給された端末で2+1のプロフィールを調べる。最初に話しけてくれた女性は、アグーチン美晴。生徒会の女子は、アダモフ霙。双子の姉妹は、王春香、王ヒカル。

学校が、終わると周さんが、待っていた。
「お疲れ様。学校は楽しかった?」
「緊張しました。」
「そうね。初日だしね。いずれ慣れるは。じゃあ今から寮を紹介するは。」
「寮?」
「え?寮?」
「え?郵送した資料に書いていなかった?」
「あ・読んでないです・・・。」
「ははは・・・。まあ見ればすぐに住みたくなるから。」周は、なれなれしく佐藤の肩をもみながら話す。佐藤は、心中では、性欲がくすぐられまんざらでは、なかったが若さゆえの恥ずかしさが、無表情を促した。

学校傍の寮という名のマンションの一室に通される。」
「はい、もしもし。」周の携帯が鳴り周が、携帯に出る。
「ごめん。仕事が、入っちゃって。この部屋で待ってて。すぐに戻ってくるから。
「分かりました。」周は、慌ててその場から離れる。

部屋に入った佐藤は、あてどもなく部屋をさまよい、一部屋一部屋見ていく。玄関に入った時から気づいていたのだが、明らかに生活感に溢れていた。部屋に極めて神聖な衣装を見つけてしまった。その二つの神秘魔力を封印するための神具を持ち上げてまじまじと眺める。
〈女がいる!〉
山登りが、突如として状況が、最後の使者大天使との邂逅に豹変する。物音を聞きつけて佐藤は、開かずの扉に手をかけてしまう。

「あ、周さん。」
「美晴ちゃん。」寮の部屋の玄関前で、周と美晴が、出会う。
「ちょっと・・・。お・・・。」
周が、晴美に声をかけようとすると部屋の中から悲鳴が、部屋から聞こえる。
「しまった・・・。」周が、小声でぼやく。
美晴と周が、部屋の中に踏み見込む。

風呂場の湯気が職人技を披露する。女性の胸の頂点部分だけをかすめるように巧に流れ女性の股の間を太ももの厚みを失わないようにしながら繊細に隠しとおす。その職人芸を披露する巧の前には、下着を持った変質者が、ただ呆然と立ちすくんでいた。そこに周と晴美が、遭遇する。

「ごめんなさい。ちょっとだけ反省してる。」周が、廊下で三角座りしている。佐藤に謝る。
「え・ああ。でもあの女性と晴美さんは・・・。」
「大丈夫、大丈夫。」周は、笑顔で佐藤を励ます。平手打ちをくらい痛む頬を撫でる。
「あ~頬真っ赤。大丈夫。」周の手が佐藤の頬を撫でる。近づいた周の顔から息吹が、佐藤の頬を撫でる、高山に雪解けが訪れ動植物が、春の訪れに歓喜する。佐藤は、頬の紅潮を超えて失神の領域に近づいていく。

「入っていいよ。」部屋の中から晴美が、玄関のドアを開けて佐藤たちを招き入れる。部屋の中に入ろうとする。晴美と佐藤の目が、合う。佐藤の視線は、晴美の視線を追う。晴美の視線は、佐藤の右手に自然と吸い寄せられる。持ったままだったのだ。気づいたときは、手遅れだった。扉は、再び閉じられてしまった。

しゃがみ込む佐藤を周が、気遣う。
「これから仲良くなれるわよ。」佐藤は、両頬にもらったお土産をさすりながら、ため息をつく。

部屋にやっと三人と変質者一名が、揃う。
「重ね重ねごめん。」周が、両手を合わせて両目をくの字にして謝る。
「いや、周さんは、悪くないですから。」
「私も別に・・・。」先ほど、湯気職人と共に、その性的な肉体で、佐藤をちょめちょめした黄由美が俯きながら頬を染めて小声で佐藤を受入れた声を出す。
「僕も別に・・・。」佐藤も俯き加減に乗っかる。
「あんたには、聞いてないわよ。」美晴が、佐藤に釘を刺す。
「二人にお願いが、あるの。二人も知っての通り彼は、あなたたちと同じ候補生だから集団生活が、義務付けられているのそこで・・・。」
「やだ。」
「何で~。」周が、晴美にひっつく。
「なんで、私たちの部屋なの?」
「ちょうど、2人でしょ。」
「まあそうだけどね。」寮は、基本3人部屋だったが、一人」出て行ったので、晴美と亜美の二人になっていた。
「それに、他の生徒たちにも聞いたんだけど。学校に男が、少ないことを嘆いていたみたいじゃない。美晴。」
「いや、それは何言ってんの?そんなことただの噂よデマよそうデマ私が、嫌いで嫌いでたまらないゴミが、仕掛けた罠よ。」晴美は、動揺して早口で手を振りまわしながら100人中100人百発百中絶対確実に見抜かれる大噓をつく。
「誰もよかったんだね。」佐藤が、言い終わるころには、首を絞められて白目を剥いていた。しかし、剥かれたのは、白目だけじゃなかった。首を絞めるときに晴美の胸が密着して興奮して、失神しただけだった。

学校では、実践的な訓練もあった。異邦人対策で製造された生物人型兵器の操縦を疑似装置を使っておこなうものもあった。
「佐藤君大丈夫?」霙が、声をかける。
「あ・ああ。ちょっとここの起動が・・・。」シュミレーション装置の前で佐藤は、操作にもたついていた。
「いいですか?ここのスイッチは・・・。」霙が、佐藤の手を自信満々でつかみ背中の側に無駄にその贅肉を擦り付け密着して、手取り足取り佐藤にシュミレーション装置の操作を教える。
「ちょっと!あんたベタベタ引っ付きすぎよ!」美晴が、顔を引きつらせて霙にくってかかる。
「人のことなんて言える立場かしら美晴さん?あなた、佐藤さんと一緒に暮らしているそうじゃないですか?」
「えー!」クラス中の空気が、変わる。クラスメイト全員が、黄色い声をあげる。
「し・しかたないでしょ。高防からお願いされたんだから。」美晴が、顔を赤らめながら慌てて反論する。
「由美ちゃん本当なの?」クラスメイトが、亜美ちゃんを取り囲む。
「うん・・・。高防の人にお願いされて一様そういうことになってる・・・。」亜美ちゃんは、俯きながら答える。
「キャー!」亜美を取り囲んだクラスメイトが、黄色い歓声をあげる。
「そんなことより、とっととどきなさいよ!」美晴が、霙を無理やり押しのけようとする。
「じゃあ、あたなが、佐藤さんに教えるのですか?」
「え?あ・あ。あああそうよ!そうよ!私が教える方がいいに決まってるじゃない!」
「あなたが、指導すると馬鹿がうつりますは。」
「うっさいわね。頭でっかちに言われたくないわよ!」
「美晴ちん頑張れ!」
「霙も頑張れ!」王姉妹が、無駄に二人を煽り事態を面倒臭くする。

一斉に携帯が、鳴る。
異邦人の訪れを告げるものだった。
轟音と共に、周さんのスポーツカーが、学校に姿を現す。佐藤と由美は、授業を切り上げ高防に向かう。
「初めての出動ね。」
「ええ。」
「緊張してる?」
「まあ、あまりシュミレーション訓練も上手くいきませんでしたし・・・。」周に尋ねられて佐藤は、自信なさげに答える。
「大丈夫よ。基本さえしっかりしていれば。」

地下の一室に由美と佐藤は、集められた。
「あらためまして、周でよろしくお願いします。」笑顔で周が、お辞儀をする。しかし、どこか真面目な自分に笑っているような表情にも見えた。
「では、さっそく、説明を始めます。先ほど、5時・30分ごろ、紀伊半島沖30キロに異邦人が、現れました。こちらが、その映像になります。」スクリーンに映像が、映し出される。光の円をした物体が、神々しさもって海上から地上の人々を見下ろしていた。
「これが・・・。異邦人・・・。」佐藤が、独り言を呟く。
「でも、今のところ特に被害の情報が、入ってない気がするんですけど。」由美が、純粋に揚げ足取りなどではなく質問をする。
「そうね。でも証言があがっているのよ。」スクリーンが、駅の映像に移り変わる。

「ふざけんな!なんで分からないんだよ!お前ら全員死んでしまえよ!」駅のホームで3代ぐらいの女性が、大声で叫んでいる。誰と喧嘩しているのかと思えば、誰とも喧嘩していなかった。スマホで撮られた映像のせいだろうか、あまり画質が良くなく画面も小さい。周りの人には、無視されている。誰かと喧嘩しているわけでもないので、駅員が、飛んでくることもなかった。
「真理の輪のせいだ!」
「電車が、通過しますご注意ください。」自動音声が、流れる。さっきまで叫んでいた女性が、美しくその命を散らすはずだった。女性が、通過電車に飛び込むと同時に轟音が、駅構内に鳴り響く。そして電車は、その場で停車に成功する。駅員や救急隊員が、駆けつける。列車から女性の鳴き声と悲鳴が、聞こえる。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」鳴き声と叫び声が、響き渡る。決して静かではない都会の駅構内でも一切声が、遮られることはなかった。電車の底から、消防職員が、出てくると同時に、駅員が、ブルーシートを張る。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い。」電車の底から引き上げられる時も、悲鳴は、続く。痛覚を持って生まれてきたことを後悔するような痛みが、走る。

「うぅ・・・。」佐藤は、思わず顔を覆う。
「ごめんなさいね。一応資料は、きちんと見せておかないといけないから。」周が、謝る。
「・・・。」
「・・・。」由美と佐藤が、見つめ合う。
「なに?」
「いや、平気なのかな・・・って。」
「由美ちゃんのお母さんは、お医者さんだから将来は、由美ちゃんも将来は、お医者さんを目指しているのよ。」
「その、たまにお母さんが、勉強している資料が、目に入ったりするから。」由美ちゃんが、控えめに話す。

「じゃあ、続きいくよ。」
「え?まだあるんですか?」えに濁点が、着きそうな勢いで声を佐藤が、声を出す。

映像が、警察の取調べの風景に変わる。
「どうして、こんなことをしたんだ。」
「私の娘と嫁を取られたからだ。」
「はっー。」取調べを行っている警察官が、別の捜査官の顔を見る。二人ともあきれていた。
「いいですか。大川さん。あなたが、高校時代から交際して結婚なされた主張されている方の名前は、高橋由香さん。彼女は、一度もあなたと交際したことがないと主張しているうえに、あなたに会ったことすらないと言われています。」
「嘘だ!全てねつ造だ!彼女と娘を返してくれ!日本の司法は、腐っている!ここに証拠が、あるこの写真を見てくれ!こ・ここに・う・写っているだろ・ほ・ほら彼女だ!ここで告白したんだ。」大川は、写真を見せながら、声を震わせながら主張する。
「いや、大川さん落ち着いてください。この写真、あなたの隣に写っているのは、弥生ちゃんですよ。榛原前方後円墳のマスコットキャラクターです。人は、写っていません。」大川が、見せた写真には、ゆるキャラの隣で笑顔で写っている高校生時代の大川が、写っているだけだった。

画面が、変わり。血を流して4人家族が倒れている映像が、流れる。目を開いたまま倒れている。

「うぅ!」佐藤が、また顔を伏せる。

「あっごめんなさいね。また。」周が、謝る。
「でも、今の映像と異邦人に何の関係が?」
「ここ一週間で自殺が、10倍、殺人が例年の10倍まで膨れ上がっているの、当初は、警察の仕事だったんだけど、加害者のほぼ全員が、みな真理の輪のせいだと主張していることと、その加害者の主張をもとに警察が、復元した真理の輪なるものが、紀伊半島沖に現れた異邦人にそっくりなことから、この一連の自殺、殺人事件を警察の管轄から高防の管轄に移管して、我々が、対応することとなりました。」
「で、私たちは、何を?」
「あなたたち二人には、八咫烏、鬼刃で、出撃して真理の輪を倒してもらいます。」
「じゃあ、保護は?」佐藤は、由美と周のやり取りをただ適当に聞き流す。
「今回の真理の輪は、状況などを考慮して保護はせずに、殲滅対処とします。」高防は、一部異邦人を保護する活動もしている。

作戦の概要や敵の状況など一通りの説明を終えた後、2人は、周と共に更衣室に向かう。
「あ、ごめんなさいね。男性の適合者は、ほとんどいないから想定されていない。から、一緒に使ってね。こう・・・その・・・うまいぐわいに。」
更衣室に入るとそこは、ただの更衣室だった。あるのはロッカーだけだった。当たり前の話だ。更衣室なのだから。

佐藤は、ドアを開けて外にでる。
「え?着替え終わってないでしょ。」
「いや、順番に着替えれば。」
「何言ってるの?時間・時間。」周さんが、細い腕を指で示す。
「いや・・。でも・・・。」

突然、佐藤は、腕を捕まれ、中に引き込まれる。
「あっ・・・。」
「私のことは、気にしないでいいから。」いつになく大胆に由美が、佐藤に迫る。
「あ・。」不意をつかれた佐藤は、言葉が出てこなかった。
「時間もないし。着替えちゃうね。」
「え・あ・え?」由美が、制服を脱ぎ始める。佐藤は、慌てて反対を向く。衣擦れの音だけが、聞こえる。・・・・。沈黙が流れる。
「着替えないと間に合わないよ。」
「あ・あああええ・ああそうだね。」佐藤は、慌てふためき声にならない声を発する。制服を脱ぐと由美のあまり外出してないからか、それとも地肌が、そうなのだからか繊細な雪肌が、現れる。もちろん佐藤は、見てない決して見ていない。

佐藤と由美は、間髪入れずに、異邦人対策機に乗せられる。
「こちら、指令3。八咫烏どうぞ。」
「あ・はい。八咫烏です。指令3どうぞ。」佐藤は、無理くり授業や実習の内容を思い出しながら操作や連絡を進めていく。
「発進準備できたか。」
「はい。」

「発進!」

地下に停留されてた。八咫烏がエレベーターによりl高速浮上する。リニアの力により一気に地上へと到達する。
「佐藤君気分は、どう?」周さんが、指令室から連絡を入れる。
「うまくいくか心配です・・・。」
「大丈夫よ。指令室からしっかりサポートするから。学校でやったことを思い出しながら頑張って。」
「あ・はい。」
「では、目的地への誘導を開始します。」指令室からアナルンスが、入る。遠隔操作によって紀伊半島沖へと向かっていく。

到着した目的地は、寂れた漁村だった。時折村人が、スマホ片手に遠くから撮影している様子が、モニターに映る。佐藤は、手を振る。もちろん、外から見れば、巨大な人型ロボットが、手を振っているように見えている。
「見えてる?」周さんから連絡が入る。
「はい、まだ遠いですが・・・。」モニターにぼんやりと異邦人の輪郭を捉える。
「まだ、動きは、ないから釣りでもしといて。」
「え?釣りですか?」
「そう、釣り。釣りやったことない?」
「いや・・・一度も・・・。」
「駄目ね~。」
「すいません。」
「いや、怒ってるわけじゃないから。若いんだからもっと遊びなさい!」現地に派遣されている職員だろうか、大きな釣り座を持って、手を振っている。
「あの・・・。釣り竿を持っている人が・・・。」
「手え振ってるでしょ。その人から釣りもらって。」
「了解。」

「ちょっと、周やりすぎじゃない。」指令室で見守っていた技術者のハネが、声をかける。
「いいのいいの。あやって成長していくのよ。」
「変な育て方すると。まともなパイロットにならないわよ。」
「何言ってるの。パイロットとして一人前になるよりも、人間として一人前にならなくちゃ。そもそも、あんたも独身でしょ。偉そうに。」
「あら、それは、お互い様でしょ。」
「鬼刃、到着しました。」オペレーター真凛が、報告する。

鬼刃が、佐藤の元に到着する。
「何・・・、やってるの?」
「え・・・。釣りだけど・・・。」巨大な人型ロボット八咫烏が、あぐらをかいて釣りをしている。
「なんで?」
「いや、周さんが釣りしてろって。」
「冗談だと思うよ。」
「・・・。」八咫烏の頭に鳥が、泊る。
「お!釣れたよ!黄さん!」釣りざおが、何かに引っかかり、上下する。鳥たちが、群がってくる。黒い長い髪の毛に、全裸の上半身、胸もしっかりあった。しかし、腰からしたがなかった。死体だ。佐藤は、竿ごと海へ放り投げる。真っ赤な断面が鮮明に目に焼き付かせられる。
「ちょっと、竿をすてたらだめだよ。」由美が、冷静につっこみを入れる。
「そこじゃないでしょ。」

「距離30!」
「二人とも接近するよ。」指令室から連絡が、入る。
「はい。」肉眼でも真理の輪が、近づいてきているのが、見えた。
「ライフル射撃に攻撃による殲滅になります。」
「二人ともライフルの準備できた。」周が、オペレーター連絡に割って入る。
「はい。」由美、佐藤がライフル射撃を開始するはずだった。
「あれ?あれ?ん?」轟音と共に連射をし、真理の輪に穴を空ける。光の輪には、射撃のせいで穴が開いていく。
「どうしたの?」
「ライフルが、撃てません。」佐藤のライフルは、無音だった。
「え?ちょっと、もう一度手順を確認して。」
「はい。」
「手順を説明します。」指令室からオペの真凛が、再度手順の説明をする。佐藤は、慌ててライフルの再設定を行う。その間も由美の機体は、ライフル射撃を順調に続ける。

「評価をお願いします。」由美が、指令室に指示をあおぐ。真理の輪は、穴だらけになっていた。
「評価開始します。」その間も佐藤は、ライフルの起動に手間取っていた。
「ちょっと貸してみて。」
「え・ああ。」由美が、モニターごしに佐藤のことを気遣う。実際は、巨大ロボットごしに手ほどきを受けてるだけなのになぜか、佐藤には、吐息がささやかに感じられた。
「画像判定・・・。消滅・・・99%」真凛が、人工知能の判定結果を報告する。
「よっしゃぁ!」指令室が、沸き立つ。
「え?あれ?終わったの?」佐藤は、何もせず棒立ちしているうちに終わったので呆然とする。ボロボロになった光の輪の残骸が、宙に浮いてるだけだった。

「二人ともよくやったは。お疲れ様でした。」周が、二人の労をねぎらう。
「ありがとうございます。」由美が、お礼を言う。
「ん?」
「どうしたの?」
「いや。」佐藤は、光の輪が、消えながら徐々にうねっているように見えた。
「あの・・・。光の輪動いてません?」佐藤は、控えめに指令室に確認をとる。
「画像判定の結果、真理の輪に動きはありません。」指令室から返信が帰ってくる。
「そうですか・・・。」佐藤は、はなから自信が、なかったのですぐにてっかいする。
「エネルギー反応0%!」人口知能の判定結果が、出る。指令室が、沸き立つ。あるものは、椅子に深く腰掛ける。エネルギー0%ということは、異邦人が、エネルギーを失った搾りかすなったこと意味する。
「今回の異邦人は、大したことなかったですね。」真凛が、ハネに話しかける。
「そうね。」ハネは、緊張から解放されたのか、伸びをする。

「で、三番を開閉して・・・・。」
「ああ。これかな。」佐藤は、まだ由美に手伝われて、ライフルの再設定をしていた。
「できた?」
「できたかも。」
「せっかくだから、撃ってみなさいよ。」指令室から二人を見守っていた、周が、隣のハネに目線で確認をとる。
「ええ。もちろん。早く慣れてほしいいしね。」ハネが、うなずき返す。
「いいわよ。」

「あああああああ。」指令室に絶叫が、響き渡る。
「どうしたの?」周が、すぐさま佐藤に確認をとる。周は、瞬時に佐藤の絶叫だと気づく。
「痛い痛い!」痛いという言葉を叫び散らす。
「何やってるの!由美!」無人偵察機からの映像で、由美の機体が、八咫烏にライフル射撃をしていることが、分かった。
「由美!応答して!」
「こちら指令3、鬼刃応答せよ!」指令室からの応答を無視して佐藤の機体を攻撃し続ける。
「異邦人の反応です!」
「え!どうして!」周が、人口知能が、はじき出した情報に驚く。
「エネルギー反応確認!6号の頭上です。」
「どういうことなの?」
「佐藤君聞こえる!6号は、敵として殲滅しなさい!」
「ちょっと!由美が、まだ乗っているのよ!」
「何言ってるのよ。ここで殲滅し損ねたら市街地まで出てくるのよ。」周とハネが、口論になる。

「止めてよ!黄さん!止めてよ!痛いよ!」八咫烏は、巨大な両手両足を使って這うようにその場から逃げ出した。八咫烏内にいる佐藤には、指令室からの声は、聞こえていなかった。正確に言うと音は、八咫烏に届いてが、パニック状態の佐藤には、届いていなかった。どこに向かうかも考えず一目散に逃げだす。
「ちょっと!戻りなさい!」ハネが、佐藤にややきつく注意する。ハネの顔には、焦りが、見える。
「指令3から、6号!応答!6号へ応答!」指令室からの無線には、全く反応がない。佐藤は、逃げて生き残ることしか、考えてなく。指令室のこともそれどころか、八咫烏に乗っていることも忘れて全力逃亡する。指令室全体も急に騒がしくなる。

八咫烏が、地元住民の避難していた。山へと迫る。
「逃げてください!」地元の消防が、消防車に乗りながら拡声器を通して呼びかける。
「来るぞ!」
「なんで!」みな一目散に逃げだす。慌ててた八咫烏は、山の傍で足を滑らせてころび、豪快に山にぶつかる。

「遠隔操作に切り替え。」指令室から課長の曹が、指示を出す。
「分かりました。」オペレーターすぐに、遠隔操作に切り替える。

「なんだ?」一目散に逃げだした地元住民が、振り返る。八咫烏は、山に激突して動かなくなっていた。八咫烏は、突然起き上がり、元来た道を走っていく。
「何やってるんだよ!戻れよ!」八咫烏が、佐藤の操縦を振り切り由美の機体へと向かっていく。
「落ち着いて、自動制御になっただけよ。」周が、なだめる。
「え?逆走してますよ!止めてくれええええええ!」佐藤は、鬼刃との戦闘の恐怖でパニックになる。
「落ち着いて!シールドを展開して!佐藤君聞こえる?」
「ああああああ!」由美のライフル射撃が、佐藤の機体に命中する。佐藤は、痛みに身悶えする。佐藤の機体は、火花と煙を上げながら由美の機体との距離を縮める。
「シールド展開。」
「シールド展開。」課長の指示で指令室から強制的にシールドを展開する。シールドが、展開された八咫烏には、銃弾が当たらなくなる。

「そ・そうだ。」佐藤は、慌ててライフル射撃を鬼刃に対して行い始める。
「ちょっと!佐藤君止めて、中には、由美がいるのよ。」
「じゃあ!早くなんとかしてくださいよ!」佐藤は、無我夢中で撃ちまくる。

「ああ、なんじゃありゃ・・・。」避難所から八咫烏と鬼刃の争い見ていた人達は、あっけにとられる。
「ぱぱ、なんで異邦人対策機同士が、争ってるの?」
「さあ?」

「シールドで守られているから大丈夫よ。クロスレーザーでCリングを外します。」周が、指令室のメンバーに作戦内容を指示する。Cリングは、コントロールリングの略で、異邦人暴走の原因だと考えているものだ。
「了解、クロスレーザー!発射!」指令室からの遠隔操作により八咫烏が、力を溜め込んで、腕をクロスさせビームを鬼刃に向けて発射する。

鬼刃の頭上のCリングが、変色し始める。
「あああああああ!」今度は、由美の絶叫が、指令室に響き渡る。
「Cリングエネルギー弱まっていきます。」
「ああああああ!」由美の着ていたパイロットスーツが、裂けて胸やお尻が突き出る。由美は、絶叫しながら、体をのけぞらせる。肉体に外圧がかかり内臓が圧迫されてゲロを吐く。
「Cリングレッド!」
〈後少し・・・。頑張って・・・。〉周は、由美に心からエールを送る。その間にも由美の機体の頭上のリングは、変色し黒みがかってくる。
「おぇええ。」由美は、すごい勢いでゲロを吐くのでゲロで喉を詰まらせむせる。外部からかかる圧力による由美は、コックピット内でほぼ全裸の状況になる。

「Cリングエネルギー反応弱まっています。残り5%!」オペレーターが、声を上げる。
「ああああああ!」Cリングを鬼刃から切り離す過程で由美に大きな圧力が、かかる。
「Cリング反応消えました!」鬼刃の頭上のリングが、姿を消す。全裸の状態の由美は、小刻みに震えながら、白目を剥いて意識を失う。

八咫烏と鬼刃は、遠隔操作で高防の地下シェルターに戻る。
「お疲れ様。」周が、佐藤を出迎える。
「これから、メディカルチェックが、入るので医務室へお願いします。」スタッフに連れられて行く。

佐藤の体には、問題がなかったのでそのまま自宅へ帰宅する。
「おかえり!」寮のドアを開けるとエプロン姿の美晴が、出迎える。
「あ・うん。」
「何しけた面してるの。大金星じゃない。真理の輪を殲滅したんでしょ。すごいじゃない。」佐藤が、寮ないに入るとテーブルの上には、手作りの料理が、あたかもふれてほしそうに堂々と置かれていた。佐藤は、数品皿に乗せて、自分の部屋に引きこもる。
「どう!驚いたでしょ。まあ、私が、二人のために作ったものであって、あんたのために作ったわけじゃないからね。ねえ、ちょっと聞いてる?」リビングに行くと既に、佐藤は、いなかった。

「ちょっと!何かないの?!」美晴が、ドアごしに大きな声で佐藤に話しかける。
「おい!」美晴が、ドアを外から蹴り飛ばす。
「ったく・・・。もう!二度と作ってあげないから!」美晴が、去っていく。
「こんなにもよく出来てるのに。」美晴は、自分の料理に自己陶酔しSNSにあげるために写真を撮りまくる。

佐藤は、一人部屋の中でもの思いに耽る。
〈大変なことになった・・・。〉佐藤の異邦人対策機の操縦は、佐藤の思っていた以上に大変なものだった。
〈もう、辞めてしまおう。〉佐藤は、電話で辞めることを伝える決意を固める。

「殺してやる!殺してやる!殺してやる!」真っ赤な鮮血が、辺り一帯を染める。そこら中から悲鳴と呻き声が、聞こえてくる。
「助けてくれ!」足元で女性が、周りに助けを求めて大声を出す。その女性の服をはぎ取り、胸を鷲掴みにする。そして、拳を女性の股の間に・・・。

「あああ!」声にならない声を出して起きる。佐藤は、周りを見渡す。気づかないうちに寝てしまっていたらしい。あたりは、すっかり暗くなっていた。
〈真理の輪だ・・・。〉佐藤は、悪夢の中で真理の輪を見た気がした。ぼんやりだったが、そんな気がした。しかし、記憶や概念などを超越したものとして真理の輪は、佐藤の魂に刻まれていた。佐藤は、この悪夢から逃げるためにも、もう一度八咫烏に乗る決意を固める。

佐藤は、ベランダに出る。おそらく満月だった。暗雲を満月が、突き破ろうとしていたが、全ての雲を黄色く照らし出し力尽きていた。ドアの向こうでは、美晴が、ドアを背に三角座りでスマホの画面を眺めていた。静寂の一瞬が、一晩ながれる。

「え?」教室について早々、クラスメイトに取り囲まれる。
「ねえ。ねえ。真理の輪との闘いは、どうだった?」
「いや・・・。上手くいかなかった・・・。」
「え?でも由美ちゃんを救ったんでしょ。」
「あ?え~ああ。そうかもしれない。」
「キャー。」王姉妹が、手と手を取り合って盛り上がる。
「私もいずれ、佐藤君と一緒にCリングと戦うのでよろしくお願いします。」霙が、佐藤の手を強引にとる。
「今の成績だと次は、平井さん。じゃないですか。」図書部のアランが、冷静につっこみを入れる。
「え?ああ。はい。」平井が、地味でおとなしそうな女子が、あたふたしながら返事をする。普段注目されることが、ないので注目をされて慌てていた。」
「でも、不登校じゃ。無理でしょ。」霙が、言い放つ。
「あんたは、デリカシーってものがないの?」美晴が、イラつきながら霙に食って掛かる。
「あなたにだけは、デリカシーなんてことは、言われたくありませんは。」霙は、即座に反論する。

異邦人と文面との歴史に関する授業が行われていた。
「え~、20年以降、世界各地に異星生物が、次々現れその対策組織として、自衛軍大型特殊処理局、南都高度防衛局が、設立されました。両者の間で異邦人の扱いをめぐって若干の対立は、ありますが、Cリングに憑りつかれた異邦人は、ことごとく凶暴化、凶悪化することだけは、両組織共に、合意しています。しかし、保護に関しては、両者対立が鮮明化しており・・・。」授業が、淡々と進んでいく。

学校が、終わると、周が待ち受けていた。
「お疲れ様。」
「あ・はい。」
「お見舞い行きましょ。」
「?」
「由美のよ。」
「あああ。でも僕は。」佐藤
は、言わるまで由美のことを忘れていた。なんども昨日の戦闘のことやこれからどれだけ恐ろしい異邦人が、現れるかということが、授業中もずっと頭から離れなかった。
「駄目よ。仲間なんだから仲良くしなさい。」

「あ・いいです。そんな大げさなものじゃないから。」病室を訪れると誰かが言い争っている声が、聞こえた。
「さ・行ってきなさい。」
「え?でも・・・。」
「いいから。」周は、お見舞いの花を持った佐藤の背中を押す。

「あの・・・お見舞い。」ドアを開けると全裸の由美が、看護師に体を拭かれていたところだった。
「あ・。」由美が、驚いた眼をでこちらを見ている。
「ごめんなさい今は、ちょっと・・・。」看護婦が、なんだか楽しそうな顔で、佐藤を追いかえす。

今度は、笑顔の看護師が、ドアを開く。
「どうぞ。」周と佐藤は部屋の中に入る。
「状態は、どう?」周が、由美に尋ねる。
「なんともありません。あのもう退院してもいいですか?」
「駄目よ。先生もまだ入院してないといけないっていったでしょ。」隣にいた笑顔の看護婦が、撫でるように由美の両肩に両手を乗せる。由美は、周に対して助けを求めるような目で救援を求める。
「そうね。先生が言うならしかないわね。」
「あ・これお見舞い。」由美の気まずそうな視線も気づき、佐藤は、周があらかじめ準備していた花束を渡す。
「ありがとう。あの・・・。」由美が、上目遣いで言いずらそうに切り出す。

「あ・いや、さっきのはその、ごめん・・・。」佐藤は、慌てて取り繕う。さっき絶対安静を指示されていた由美は、看護師に体を拭かれていた。佐藤の目には、カーテンからの光で後光が、差した由美の羽が生えたと錯覚する、神々しい姿が、目の裏に4Kの画質で鮮明に残っていた。いやでも見てないふりをした。
「いや、あの・・・。先日はありがと。」
「え?」
「もし、浄化されてなかったら私どうなってたか・・・。」

「でも、無事でよかったは、なんせ初めての事例だったから。」周と由美は、真理の輪について話始める。
「異邦人対策機が、真理の輪に取り込まれたのが、ですか?」
「そうね。Cリングが、ああやって長時間異邦人に憑つかず現れるのも初めてだし、異邦人対策機に憑つくのも初めてだしね。」佐藤は、由美と周の話を黙って聞いていた。
「でも、真理の輪の目的ってなんだったんでしょう。人類の滅亡ですか?」
「佐藤君は、どう思う。」
「え?」
「目的。」
「ん~・・・、人人同士を争わせて滅ぼすとかですかね。」
「そうね。それぐらいしか、思いつかないわよね・・・。」

周の携帯が、鳴り異邦人の出現を告げる。由美が、ベットから起き上がろうとする。
「駄目よ♡」看護婦が、由美を抱きしめる。
「え?私も!」由美は、抵抗してなんとか病室から出ようとする。
「行きましょ。」周が、ためらってる佐藤を促す。
「いや・・・でも・・・。」
「いいのよ。あれは、二人だけの世界だから。」
「そうなんですか。」
「佐藤君!」ドアは、無情にも閉められる。

「こちらです。」
「また、巨大な・・・。」周たちが、高防に到着する。モニターには、ムカデと芋虫を足して割ったような生き物が、薄暗い地下を漂っていた。
「現場からの報告によると、特に危害等は、加えてこないそうですが、状態からして異邦人との疑いが、ありこちらへの通報が、ありました。」真凛が、説明をする。
「現場からは、早く撤去してほしいとのことです。」
「そっとしておいたら駄目なの?」周が、オペレーターたちに尋ねる。
「工事に支障をきたすから撤去してくれとのことです。」
「工事現場でトンネルの掘削中に現れたそうです。」
「参ったわね・・・。」

「聞こえてた?」すでに八咫烏のコックピット内で待機していた佐藤が、反応する。
「あ・はい。で・何をすればいいんですか?」
「そうね・・・。取り合えずなんとかトンネルの中から抜き出してほしいの・・・。だから・・・・とりあえず、現場までお願い。」
「あ・はい。」
「・・・。」指令室のオペレーターが、白い目で、周の方を見る。
「私は、現場主義だから現場に行けば全て分かる!」

八咫烏だけじゃなくて、他の異邦人対策機、つるぎ、冥王も目的地に向けて遠隔操作で向かう。
「レッツゴー!」黄春香が、元気良く出発する。黄の乗っている巨大人型ロボットも腕を振り上げる。
「ちょっと、黄さん。勘違いしないくださいね。修学旅行や遠足じゃないんですから。」冥王に乗っている霙が、釘を刺す。
「いいんじゃないの~。」周も指令室で椅子にもたれかかって適当に答える。
「ちょっと、緩みすぎじゃない。」同じく指令室でアイマスクをして、椅子にもたれかかっているハネが、文句を言う。
「あんたに言われたくないわよ。」指令室の空気も緩みきっていた。先日までの自殺、殺害騒動で、緊張を強いられていたので、真理の輪に比べて今回の異邦人は、どうということなかった。
「あ~、ちょっとそのコーヒー取って。」アイマスクをしているせいで前の見えないハネが、机の上を少しの間手を使いまさぐった後、諦めて周に頼む。
「はい。」
「う・・・・。」口を少しつけて、ハネの手が止まる。
「エナジードリンク割り一丁!」

佐藤たちが、到着する。
「状況は?」
「はい、中にNO66が、います。」霙が、格式高く答える。トンネルの内部には、確かに異邦人が、いた。
「出てくる気配は?」
「ないですね・・・・。」内部にいるNO66は、怒っている様子もなければ、出てくる様子もなかった。
「こうなったら好物でも、置いておびき出すしかないね!」黄が、提案する。
「そんな安直な。相手は、異邦人、ぱっと見怪獣なんですよ。あの化け物のどこが、犬や猫と同一視できるのよ!」
〈いや、まったくだ。いや、誰がどう見ても怪獣だ。〉佐藤も霙の意見を心中支持する。

「はい!賛成!です!」佐藤と霙は、誰の声かと驚く。指令室の周の声だった。
「「え?」」佐藤と霙は、思わず声を出す。
「周さん分かってくれるんですね!」微塵の曇りもない美しい好奇心の塊の目を輝かせて黄が、喜ぶ。
「ちょっと、こんな巨大生き物を好物でおびき出すって、いくらんでもそんな食べ物ないでしょ。」霙のつっこみは、まっとうだった。
「ないなら作ればいいでしょ!」
「ところで・・・。何が、好物なんですか?」佐藤が、ボソッと呟く。
「「え?」」黄と周が、固まる。寝ていたはずのハネが、こっそりと立ち上がり、指令室を出ていこうとする。

「ちょっと、どこ行くの。」ジト目の周が、ハネの白衣をつかむ。
「極めて重要なライフルの設定よ。」
「で、好物は?」
「いや、何?」
「だから、好物は?」
「それは、私の仕事じゃないわ。」
「ケチ!」
「うっさいわね。」ハネが、適当に言い訳をして出て行ったの見計らって周が、現場に資材部に指示を出す。

「酒!1トン!」
「は?」周の指示に資材部から怪訝そうな声が、届く。
「いえ、ケーキ10万個!」真凛も便乗して声を上げる。
「何言ってるの?」
「作戦計画に必要なのよ。」
「いや、そんな発注できません。」
「いや、どうしても必要なのよ。」

「あ!ケーキだ!」黄が、声を上げる。現場にケーキや酒、高い香水などが、次々と届く。
「え?ななんのこれ?」
「注文があった、ケーキ万個です。」トラックのドライバーが、現場にいた高防の職員たちに話かける。
「え?そんなもの注文してませんけど。」霙が、すぐに反論した。
「あ?届いた?」周から通信が、入る。
「え?これ周さんが、注文したんですか?」
「そうよ。」
「ちょっと、こんなのどうするんですか。」
「決まってるじゃない。」周は、なぜか指令室にも届いたケーキを食べながら答える。

「どうですか一杯!兄貴!」黄が、異邦人対策機に乗って巨大な器で酒盛りをする。
「いいわね~その調子よ~。」周が、指令室から煽る。
「ほら、佐藤君も。」
「え?ああ。」黄の差し出した器に異邦人対策機に酒を注ぐ。家の基礎と同じぐらいの大きさの盃が、トンネルの前に置かれる。
「・・・。」トンネルの奥にいる異邦人からは、何の反応もない。
「どう?」周が、現場の三人に聞く。
「駄目みたいです。」黄春香が、神妙な表情で答える。
「よっし!次言ってみよう!」
「あの、一個だけモンブランが、混じっているんですが・・・。」真凛が、大量に届いた
ケーキの中にモンブランが、混じっていることに気がつく。

「私だ。」課長が、声を上げる。指令室のメンバーが、一斉に振り返る。課長は、静か口元を緩める。

「ちょっと、待っててね~。霙ちゃんも手伝いよ!」巨大なトレーラーで運ばれて来た。一戸建ての庭ほどある巨大な器を組み立てる。
「私が、なんでこんなことと、私は直接的な異邦人との接触を提案しますわ。」
「駄目よ~。」
「こんなの作戦じゃありませんは。」
「駄目よこれは、命令。」周は、ケーキを食べながら何を言っているのかよく分からない声を発する。
「ここでいいのか!」現場に到着したトラックのドライバーを降りて、話しける。
「そうです!佐藤君出番だよ!」
「え?」

「おい!今すぐ止めさせろ!」技術部のオマルが、指令室に飛び込んでくる。
「何か用?」
「なんで、あんなことされているんだ!」指令室の巨大モニターには、ケーキの生地を一軒家ほどの大きさのあるボールの中でこねている異邦人対策機が、映っていた。異邦人対策機は、粉まみれになっていた。
「作戦です。」真凛が、答える。
「あああ!滅茶苦茶だ。」今度は、異邦人対策機が、溶かしたチョコまみれになった。オマルは、頭を抱える。

結局何をしても、出てこないので作戦は延期となり、佐藤たちは、学校へと戻る。
「おはよ。ねえ・・。」退院した由美に教室で声をかけられる。
「あ。」
「ちょっと、お願いが、あるんだけど。」
「お願い?」
「今から少し時間どう?」由美が、遠慮がちに佐藤に誘いをかける。
「今からは、ちょっと・・・ごめん・・・。」
「そう・・・。」由美が、落ち込む。佐藤の脳裏に周のことが浮かぶ。人間関係嫌がる佐藤に対して周から注意されていた。
「分かった。」
「ほんとに?」由美の笑顔は、1億光年先までこの世のあらゆる生命を魅了するだろう。
「あ・うん。」

放課後、佐藤は、由美にとある部屋に招き入れられる。
「坂本さん。」
「あ・はじめして。」佐藤は、ぎこちなく会釈する。室内には、地味な20代から30代前半ぐらいと思われる教師が、いた。佐藤は、この時ある恐怖が、よぎる。
〈なんだ・・・。〉まるで、魂が、共鳴するかのような絶望が、彼にはあったしかし、その彼の絶望は、まるで自分自身の絶望のように思われた。そして、まるで自分自身が、坂本さんの目からこの世界を見ているような妙な感覚に囚われた。そして、それはあまりに客観的だった。この世界の外側から巨人が、眺めているような奇妙な感覚だった。

「佐藤君・・・?佐藤君?」
「あ・ああ。」佐藤は、由美の呼びかけで我に返る。
「さ、さ座って。」由美が、嬉しそうに椅子を引く。佐藤は、とりあえず座る。部屋には、漫画やアニメのDVDの入った棚、長机と椅子がある。
「ここは・・・・?」
「ようこそ。アニメや鉄道とか声優とかおたく文化全般が、好きだけどそこまで詳しくない、部活動に比べるとだいぶ緩いいわば、同好会のような存在へ!」由美が聞き取りやすい声で意味不明なことを言う。
「え?あ?」佐藤は、戸惑う。
「要は、アニメとかの同好会だよ。」坂本さんと呼ばれていた人が、笑顔で補足する。坂本さんの前には、鉄道の模型が、置かれている。

「佐藤君、部活とかどうするの?」由美が、尋ねる。
「え、いや特には・・・。」
「なんで?やらないの?部活?どうかなうちの部活なんか。」由美が、控えめに勧めてくる。
「いや、基本早く帰りたい派だから部活は、いいいよ。」
「え~。でも多少こういうのは、興味あるでしょ。」そう言って、アニメ南都のBDを取り出す。
「何でそれを・・・。」
「え?これに興味ないの・・・?」
「あるけど・・・。」なんで、自分の好きなアニメを、由美が、知っているのか一秒ほど疑問に思った、すぐにその疑問は、解けた。周さんの顔が脳裏によぎったからだった。

「まあ、そんなに、固く考えなくてもいいじゃないか、入部するしないなんて適当に考えればいいよ。アニメが、ただ好き。それだけでいいじゃないか。」坂本が、穏やかに言い放つ。
「はあ・・・。」
「佐藤君は、南都のどんなところが、好きなの?」
「ん~、色々あるけど、移民政策をベースに国を新たに作り直し、そして移民たちの技術力や労働力で日本を滅ぼすところかな。従来のアニメなら強さの根拠に、政治的な駆け引きが、あまりなかったらリアリティが、なかったんだよね。あの作品のいいところは、政治的な部分が、しっかり書かれていることなんですよね。」佐藤が、今までにない勢いで話始める。
「そうだね。確かにあの作品の政治的な駆け引きは、リアリティが、あったね。」
「私まだ見てないな~。」
「あの作品は、見るべきだよ!」佐藤が、珍しく推す。
「うん。」
「せっかくだし、見ようか。」坂本の一声によって一緒にアニメ南都を見ることとなった。

「ここの減便は、強烈だね。」主人公が、JR北海道の再建に際して、乗降客数千人以下の駅の廃止、廃線や、50%の減便をするシーンで坂本が、呟く。
「でも、こんなうまくいくのかな?地方自治体の市長村長も反発しているみたいだし。」由美が、現実的な意見を言う。
「現実世界では、できない政策が、通るところらへんが、物語でありアニメやラノベに向いているだよ。」
「なるほどね。もし、現実世界で出来る政策なら現実世界でやればいいだけだし。」

部活動、と言ってもただ佐藤の好きなアニメを見て話していただけ、が終わりになる。
「佐藤君・・・。もしよかったら。」由美から紙を渡される。紙は、名簿だった。
「いや、入部するとは、まだ決めていないし・・・。」
「いや、そうじゃなくて、連絡先だけでいいから・・・。駄目かな?」由美の上目遣いで即決。
「OK!」佐藤は、口にした後後悔したが、手遅れだった。

その夜、由美とアニメを見たことを思い出しながらにやけていたら。携帯に一通のメールが、入る。心臓の心拍数が、跳ね上がり、呼吸困難になりながら携帯を見える。送信元が、坂本だと分かり、急に絶望のどん底に叩き落とされる。
【異邦人は、何かを守っているんじゃないのかな?】
【そうなんですか?】
【そうだよ。】ここで、メールは、途切れた。というよりも、始めからメールをしたいとは、佐藤は、思っていなかった。

「周さん。」高防の指令室へ現場から新たな情報が、寄せられた。周は、資料に目を通す。
「みんな残念な情報よ。」現場に周から連絡が、入る。
「ちょっと、そんなに油まかないで!」霙が、巨大な鉄板に油を追加した、春香にキレる。油が、霙の異邦人対策機に飛び散っていた。
「ささじゃんじゃん焼こう!」春香は、異邦人対策機を利用して焼肉をしていた。

現場の佐藤の元にも、指令室からの情報が、届く。
「これは・・・。」情報は、レーザーで異邦人NO66周辺の状態を調べたものだった。NO66の奥には、何か巨大な物が、あることが分かった。結局トンネルは、迂回されることとなった。
「みんな、お疲れ様~。」周が、現場でアロマを焚いていた、佐藤、春香、霙に連絡する。
「え?終わりですか?」
「ええ。終わりよ。」
「ええええ!」霙が、思わず声をあげる。この数日、異邦人対策機を利用して、食欲を誘うような、ことをしたりお香を焚いたり散々やった後だったので、拍子抜けする。
「いいじゃん。無駄な血は、流さないに越したことない。あ・後。現場で焼いた肉や、ケーキは、絶対持って帰ってきてね☆これは、命令だから!」周は、この作戦で、最も重要な支持を出して、この作戦を終える。

「俺の人生を無茶苦茶にしやがって!保証賠償もない癖に!ふざけるな!あああああ!」なぜだか激しい怒りが、こみ上げてくる。そしてそれは、同時に、日本の平和主義のような崇高なものも伴っている。
〈そうだ、いつものあの感覚だ。〉ほとばしる鮮血、助けを求める絶叫。
「お願い!殺さないで!」まるで、目の前の人が、自分に命乞いをしているような、感覚に囚われる。
その混乱した中で佐藤は、一種ふと何かが、視界をよぎる。
〈まさか!〉一瞬だった。うなされて、佐藤は、起きる。

 
〈あの顔は…。〉その顔は、夢に頻繫に現れる顔だった。そして、その顔の正体を突き詰めたかもしれなかった。

「やあ、今日は早いね。」放課後、佐藤は、由美に誘われずとも、自然と足をアニ研へと向ける。坂本が、笑顔で、佐藤を迎える。坂本はパソコンで何かを見ている。佐藤も自分用のパソコンに電源を入れる。少しの間沈黙が、流れる。
「な」
「あ」同時に佐藤と坂本が、言葉を発する。
「なんだい。」
「前、いただいたアドバイスありがとうございます。」
「いや、いいんだよ。」
「ところで、なんで異邦人の奥に、何かあるって分かったんですか。」
「僕には、分かるんだよ。到達したから・・・。」
「・・・・。」頭のおかしい回答を前に佐藤は、回答に窮する。
「今日君が、ここに来て夢の中に出てくる僕のことを尋ねることも、分かるんだ。」
「え!」
「そして、数日前まで、一度も会ったことなかった男性が、なぜ何ヶ月も前から夢の中に出ていたのか。」
「どうして・・・。」今日部室に来ることは、誰にも話していなかったはずだった。
「私は、この世の真理に到達した人間だからなんでも分かる。」
「教えてくれ、この悪夢から逃れられる方法を!」
「それは、君がこの世の真理に到達することだ。」
「どうやったら到達できるんだ!」
「それは、君が戦い続けるしかない。」
「異邦人と?」
「そうだ。君が異邦人と戦い続ければ、いずれ君は、真理へと到達するだろう。」
「異邦人ってなんなんだ?」
「それも、戦いの中でいずれ知ることとなるだろう。」

「あ!佐藤君来てくれたんだ!」由美が、ドアを開けるなり嬉しそうな表情で、入ってくる。ここで、二人の話は途切れた。佐藤は、もっと知りたかったので強引に話を続けようと少し迷ったが、これ以上は、教えてくれなさそうなので、諦めた。
「何か・あった?」由美は、何かいけない現場でも見たかのような表情で、佐藤に恐る恐る話かける。
「え?」佐藤は、何のことかわからず素にかえる。この時、佐藤は、鬼の形相をしていたので、由美に心配されただけだった。普段基本的には、無表情なでの、急に鬼の形相になり驚かれた。ただ、それは、鬼のそうではなく、むしろ鬼を退治する正義の味方の目をしていた。しかし、それは、同時に最強を超えた超越した力に近づくことを意味しており、一般人には、鬼どころか悪魔にすら見えてしまった。

「はは、実は、さっきまでゲームをしてたんだよ。それで、負けたら部の合宿費用全額負担って話をしてたんだよ。冗談だから気にしなくてもいいよ。」坂本が、笑顔でさりげなくフォローを入れる。
「え!もう合宿の話してたんですか!」由美が、さっきまで疑問は、忘れ話に飛びつく。
「ああ・そんな感じ。」佐藤も取り合ず話に乗っかる。

家庭科の時間でケーキを作ることになっていた。
「はい、次に溶かしたバターを入れて。」教師が、黒板に手順を書きながら説明していく。
「佐藤君、手慣れてるね。」由美が、佐藤の手つきをほめる。
「ああ・ありがと。」
「あ・霙ちゃんまた間違えてる。先生!」春香が、容赦なく悪気なく先生を大声で呼ぶ。
「あなたは、なんでそういちいち先生を呼ぶの!」霙は、慌てながら白い粉の入った袋を開ける。
「あ!先生!強力粉入れすぎています!」ヒカルが、今度は、声をあげる。
「強力粉?え?」霙が、パニくる。

「みなさん。できましたか?」
「「先生!霙ちゃんが、砂糖の量を間違えたので失敗しました!」」王姉妹が、声をハモラセシンクロさせる。
「ちょっと!いちいち報告しなくていいから。」霙が、キレる。
「では、完成したところは、先生に報告した後、食べていいですよ。」

「ほら、チャンスだよ。」林茜が、眼鏡の地味な少女、白雪に声をかける。
「でも・・・。」白雪は、うつむく。

「あの・・・。」白雪が、うつむきながら佐藤に実習で作ったケーキを差し出す。
「ん?」茜が、白雪をひじで小突き、背中を押す。
「これ、よかったらどうぞ。」白雪の班が、作ったケーキを差し出す。
「え・あ。でもこれ、白さんの班のじゃ。」
「いいんです。ぜひ。」茜もフォローを入れる。
「ああ。でもこれ以上は・・・。」
「佐藤君、私のも食べてね。」由美が、佐藤達と作ったケーキを差し出す。
「あ・あ。」
「私たちのも!」王姉妹もケーキを差し出す。
「私たちの傑作です!」霙が、誇らしげに言う。
「みぞれちん。何もやってない!」ヒカルが、本当のことを言ってしまう。
「失礼な!」霙は、業績を偽装する。しかし、問題は、そこではなかった。佐藤の目の前には、ホールケーキ3つが、並んでいた。
「さ!」
「え・・・。」全員が、切り分けたケーキを食べるように圧力をかけてくる。

全員の携帯が、一斉に鳴る。
異邦人の登場だった。
「後で!」佐藤は、教室を後にする。
「え!」

「おめでとう、お仲間の登場よ。」指令室で佐藤を出迎えた周が、佐藤を祝う。
「これは・・・。」一緒に高防に駆けつけた由美は、指令室の巨大モニターを見て固まる。モニターには、色違いの八咫烏が、映っていた。
「分析でました。98%類似です。」真凛が、分析結果を報告する。
「参ったわね。」周が、険しい表情をする。
「?」佐藤は、何が起きているか分からないでの無言になる。まあいつも無言なんだが。
「これは、異邦人じゃなくて、異邦人対策機ということね。」美晴が、話に割って入ってくる。
「せ・い・か・い。さらに付け加えると問題は・・・。このもう一人の白い八咫烏をどうするかってこと。」周が美晴に答える。
「そんなの、倒せばいいだけじゃない。」
「でも、まだ敵って分かったわけじゃやないし。」由美が、美晴の顔色を伺いながら恐る恐る発言する。
「そうよ。そもそも私たちの目的は、異邦人の撲滅ではなく。共存を探ることよ。」「じ「じゃあ異邦人として保護するということですか?」由美が、当たり障りのない質問をする。
「そういうこと。」
「えー、あんなの保護して大丈夫なんですか?」
「やってみないと分からない。」美晴の質問に一切の迷いなく答える。
「え・・・それって一か八・・・。」
「いや、それは違う。」佐藤の言葉を即座に周が、否定する。

八咫烏は、白い八咫烏NO101の手を引きながら、保護区へと誘導する。保護区は、陸の孤島にあり、そこには国の異邦人管理職員が、いるだけの廃村だった。鉄道、バス、タクシー全てが、途絶えていたが、保護区になったことで職員用のバス路線が、再開通されることとなった。

「な~んか、見た目ほど大したことないね。」美晴が、気の抜けた声で、話す。美晴と由美の機体は、周辺を警戒をしている。
「なんか、犬の散歩みたいだね。」由美が、困惑しながら言う。
「おいおい、あんまり刺激しないで。」NO101の腕を引いている八咫烏を操縦する佐藤は、びびる。

NO101が、立ち止まる。由美と美晴の機体が、ライフルの銃口をNO101に向ける。
「どうしたの!」指令室を少しの間離れていた周の無線に連絡が、入り急いで返事をする。
「NOが、動きだしま・・・。」
〈あ!しっまっ・我慢でき・・・。〉便器に周の聖水が、注がれる音が、無線を通して指令室に響き渡る。なんとか、消音用の機械、乙姫に手をかざすが・・・。
〈!電池!〉
「あの・・・後にしましょうか・・・。」真凛が、気を遣う。
「ええ!」

「状況は!」指令室に周が、飛び込んでくる。
「三毛猫です!」
「なんですって!」
「しかも、子猫です!」
「え!そんな!・・・で・あの猫は何?」

NO101が、しゃがみこみ怪我をしていた猫を拾い上げる。
「それを助けろと。」
「・・・。」無言で、NO101が、八咫烏の方を向く。
「美晴お願い。」周が、無線を通して美晴に指示を出す。
「え!なんで私が!」
「あの・・なら私が、行こうか?」由美が、不満たらたらの美晴代わって、申し出る。
「あんたもなんかいいなさいよ。」
「・・・。」
「ちょっと聞いているの。」佐藤は、猫が、あまりにも可愛かったのでモニターで拡大して眺めていて、話を全く聞いていなかった。

無事、NO101を保護区へと送り届けた。ここは、異邦人用の特殊な空間柵が、全方位に張り巡らされており、保護区の外へは、異邦人は、出られないようになっている。NO101は、柵の中に入れられると、三角座りして佐藤の方を見てくる。佐藤は、自分が、あの柵の中に入っているような不思議な錯覚に陥っていた。
〈まるで、自分じゃあないのか?〉なぜそのような錯覚に陥ったのかは、定かではなかった。

保護区へと送り届けた次の夜。異邦人出現の警告が、携帯に届き慌てて佐藤は、部屋を出る。
「あっ。」
「あ・さては気になって見に来たのね。い・いいわよ別にみ・せ・てあげても。」
「え・でも私はちょっと・・・。」二人の前を猛ダッシュで駆け抜ける。
「今回は、出血大サービスよ。」部屋の玄関の扉が、閉じる音がする。
「ああ・でも興奮して飛びかかるとかは、なしだから。まあ、最悪どうしてもというなら千回ぐらい土下座するならまぁ、考えなくないけどね。」
「美晴ちゃんもう、行っちゃったよ。」
「え?あ?」美晴は、佐藤に話しかけるつもりだったが、佐藤は、慌てて出ていた。美晴と由美は、この夏着る水着を試着したまま立ち尽くす。巨乳とは、想像できない真面目な顔の由美の巨乳と、気の強さを反映したように、反り立つ胸が、水着で押さえつけられていた美晴に全く反応せずに通り過ぎて行く。

セミの鳴き声する大地、轟音が鳴り響く。轟音と共に、電線が大きく揺れる。
「キャー!」
「みんな、落ち着いて!」
「何だ?」
「何だこの揺れ!」
「まあ、死ぬことはないだろ。」
「みんな!頭を守って!」近くの学校の校舎内は、パニックに陥っていた。

「緊急・緊急・校内放送です。ただいま大きな揺れが、ありました。状況を確認中ですので、しばらく教室で。な?あ?えええふぉおおおおおお!」
「なんだよ。」動揺しすぎた校内放送を男子たちが、嘲る。ただ、男子は、気丈に振る舞っているだけで、心臓の動悸は、激しかった。
「ラインやりながら、放送してるんじゃね?」
「この地震何?」
「この地震東日本大震災なんじゃない?」
「また?」
「おい!あれ!」
「なんだよ。」内心ビビりまくりながらスマホを余裕そうにいじっている男子生徒に別の男子生徒が、話かける。
「だからあれ!」
「え?あああああふぉおおおおおお!なんじゃ!あれ!」校舎からは、巨大なロボットが、見えた。

東北の地に突如降り立った、NO101は、近くにあった建物を壊し始めた。

「現在地は!」周が、指令室で、移動中の八咫烏の位置を確認する。
「新大宮です。」真凛が、答える。
「まもなく仙台です。」
「よっし!NO101の状況は!」
「以前、宗教施設を破壊しています!位置に変更ありません。」巨大モニターで八咫烏が、陸路で確実にNO101に近づくようすが、表示される。
「NO101ロスト!」
「え?どういうこと?」
「NOの反応が、消失しました。」
「え!」NO101は、空間柵をいつの間にかとっぱし、仙台まで移動し姿を晦ました。

「姫路です!」
「え!ん~参ったわね。美晴出れる準備できる?」
「いつでもOK。」
「よっし!美晴を向かわせるは。」今度は、美晴の機体冥王が、姫路に向けて陸路で送り込まれる。

姫路に出現したNO101は、またもや宗教施設を破壊し始める。

「ねえ、いつ到着するの?」美晴が、気の抜けた声で周に聞く。
「ちょっと、観光してないさい~。」
「なんで、飛行機じゃないの?」
「経費節約よ。」
「えー。」
「いいじゃない、グランクラスよ。」
「えー、私はどちらというよりファーストクラス派なの。」冥王の機体は、陸路を使って鉄道により運搬されていた。

「私は鉄道派だ。」課長が、誰も聞いてないなのに勝手に答える。
「冥王は、姫路を到着との連絡が、入りました。」豪は、JRからの連絡を伝える。
「了解。つるぎ準備できた?」
「はい、つるぎ現在、南都近郊にて待機とのことです。」
「つるぎまで、どうするつもりなの。」ハネが、尋ねる。
「私の予言はあたるのよ。」
「ここにも来ると。」
「そうよ。」
「か・」ハネが、勘という言葉を発する前に周が、話を遮る。
「美晴見える?」

「ん?あ!いた!」姫路に展開している美晴から連絡が、入る。
「よっしゃ!攻撃を許可します!」
「そうこなっくっちゃ!」冥王が、ライフルを構える。
「「「あ」」」指令室と姫路の現場で同じ声が、発せられる。
「「・・・。」」また、NO101が、姿を消したのだ。

「博多です!」
「大当たりね。」オペレーター豪の声に、ハネが、皮肉を言う。
「美晴!」周が、間髪入れずに美晴に連絡を入れる。
「え?博多!」やり取りをモニタリングしていた美晴が、即座に反応する。
「博多ラーメン経費で落ちるから!」
「私は、具は、卵抜きがいい。」課長が、またもや勝手に答える。
「いや、卵はあった方が・・・。」課長補佐のクマールが、真剣に提案し、課長の業務を補佐する。二人とも全面のモニターからは、少し離れた位置から周たちの様子を見守っている。

この後もNO101は、場所を変えながら宗教施設を破壊していった。そして忽然と姿を消していった。結局出動した、機体は、そのまま現場待機することとなり、各自地元の旅館で泊ることとなる。
「こちらの部屋です。」中年の着物姿に誘導されて泊る部屋に向かって行く。ドアを開け中に入り。襖を開ける。

「え!」襖を開けた佐藤は、思わず大きな声をあげる。
「ああ、入り給え。」それは、とても丁寧で礼儀正しい声で、中へと誘う。しかし、佐藤は、瞬間に逃げだそうとする。
「え!え!なんでだよ!クッソ!」襖が、全く反応しない。動かないのだ。
「無駄なことは、止めた給え。核兵器を使ったところで、開かないよ。」そう言って男(多分)は、お茶をすする。
「あ!そうだ!誰か!誰か!」佐藤は、大声で叫ぶ。襖を何度も叩く。無言で男は、パニックになっている佐藤のことを眺めている。佐藤は、慌てて携帯電話を取り出す。慌てて過ぎて携帯電話を畳に落とす。
「無駄だよ。」
「何で何だよ!」携帯電話は、なぜか圏外になっていた。
「何もしやしないよ。座り給え。」

脱出を諦めた、佐藤は、ちゃぶ台の前に座る。
「どうだね。一杯。」
「・・・。」佐藤は、ちゃぶ台越しに対面で座っている男の方を無言で見つめる。
「仙台は、少し涼しいね。さぶいくらいだね。」セミの声が、辺りを撫でる。
「お前は!何ものだ?」
「NO101。」佐藤の前には、一室に収まるまでに縮んだ白八咫烏が、胡坐をかいてお茶をすすっていた。
「どうして、宗教施設を破壊する。」
「それは、影だからだ。」
「影?」
「私は、影だ。お前は、自らの陰を受け入れようとしない。」
「自らの陰?」
「そうだ、お前は、決して到達者にはなれない。」
「お前!到達者について知っているのか!」佐藤は、思わず立ち上がる。
「お前が、到達者だ。」
「え!?」

「佐藤君!佐藤君!」ドアの外から声とドアを激しくノックする音が、聞こえてくる。
「じゃあ、私はお暇することにようかね。」NO101とても冷静に残りのお茶を飲み干してゆっくりと立ち上がる。NO101は、襖を開け姿を晦ます。
「佐藤君!」襖を開けて高防の職員が、姿を現す。
「大丈夫か?!」慌てた職員に心配される。
「はい。」佐藤は、あっけにとられ呆然としている。
「ここに異邦人の反応が、あったんだが何かあったか!」
「お茶会です。」
「え?」
「異邦人とここでお茶会しました。」

「状況は!」指令室から連絡が、入る。
「こちらカラス02、現場で異邦人と佐藤君が、お茶会をしていたとのこと、なおNO101は、現場から逃走中。」
「了解。引き続き警戒をお願いします。」
「了解。」NO101は、佐藤の前に姿を現して以降、姿を現さなくなった。

佐藤は、電車に揺られながら車窓を眺める。鉄道は、一路海へと向かっている。部の遠征で、海水浴に行くこととなった。そもそも、アニ研は、海水浴なんて柄ではなかったので少し戸惑っていた。
「はいはい!今回幹事を務めます。王春香です!」見分けるのが、困難な姉妹が、勝手に仕切り始める。
「ヒカルです!」
「さ!さっそくくじを引いてもらいます。」
「ささ、引いて。」電車に乗っている生徒たちにくじを引かせていく。

明らかにおかしかった、アニ研の合宿なのに、メンバーが優に30人は、超えていた。佐藤は、もうめんどくさかったので、特には、突っ込まなかった。毎日朝、家の庭にある木に泊るスズメが、フラミンゴに変わるぐらいに思い軽く流した。
「さ、佐藤君も引いて。」誘拐されそうなぐらい可愛い童顔の王の姉妹どちらが、佐藤にくじを引くよう促す。
「いや・俺はいい。」
「佐藤君、王様ゲームやったことないの?」ヒカルが、若干挑発的な表情で煽る。
「引いて。」あどけない笑顔が、強制をする笑顔に変わる。要は、怒りが見て取れた。佐藤は、しぶしぶくじを引こうとする。
「ん?」春香が、差し出したくじには、一本だけ先が、金色に光っている物があった。

佐藤は、猛烈な危機感を感じ金色に光っているくじを避けようとする。
「ん?」別のくじを引こうとすると、瞬時に金色に光っているくじと入れ変わった。春香の方を見ると万遍の笑みだ。もう一度金色に光っているくじ以外に手を伸ばそうとすると、また残像と共に猛スピードですり替えられる。佐藤は、諦めて金色のくじを引く。
「あ!大当たり!佐藤君が、北の将軍だね。」よく見ると北の将軍と書かれていた。
「はい。」
「え?私も・・・。」白雪も若干戸惑いながら一本引く。
「軍幹部?」
「ちょっと、さっきから何ですかこれ?」
「変なのばっかりです。」霙と茜が、王様ゲームに違和感を覚え始める。

「これは、闇のゲーム。」長い黒髪が、どこかトイレから出てくる某お化けを連想させる少女石井イゼルが、井戸の底から響き渡るような声で、話に割って入る。
「わっ、ちょっと、変な声ださないでよ。」水着になれば、白と黒のグラデが期待できそうな空手部の高橋子が、飲んでいたコーラを吐きそうになりながら抗議する。
「やだなー。イいちゃん。ちょっとした闇のゲームだよ。間違えないでね。」春香が、笑顔で答える。

「あ!ちょっと、これ何?」霙が、不満そうな表情で、くじを眺める。
「ハハハハハ。お似合いじゃない。」霙のくじには、弾圧される民と書かれていた。
「ちょっと!なんで私がこんな役を演じないといけないんですの!」霙が、ヒカルの頬を引っ張る。
「霙ちん落ち着いて。」口に指が、入ったままヒカルが、声を出す。
「はーい!みんな撮るよ。」電車に乗った瞬間から写真を撮りまくっていた高橋子が、声をあげる。
「あ。」美晴が、自分のくじを見ながら呆然と立ち尽くす。
「ぷっ。」目の前でささたら100人中100人を、キレさせそうな表情で、美晴が、笑う。という馬鹿にする。そのくじには、奴隷と書かれていた。

現地に到着した一行は、さっそく海に入る準備をする。到着と同時だった。異邦人出現の連絡が入る。

指令室は、笑いに包まれていた。
「ほんとに反応あるの?」周が、モニターを見ながら真凛に尋ねる。
「はい、エネルギー反応あります。」
「本当に?」
「はい。」
「でも、あれって・・・。」周は、あっけにとられながらモニターをまじまじと見ている。

「あれは・・・。」
「かみだな。」
「かみだな。」曹とクマールは、モニターを見ながらそう声を発する。モニターには、巨大な紙が、一枚写っていた。
「まあ、いいわあの紙を異邦人NO99と指定。現在より対策を開始します。」
「了解。」

「え?あれを。」
「今のところ特に危害を加えたりということは、報告されてないは。そのまま、保護区まで安全に誘導するように。」
「はーい。」気のない返事を美晴が、する。
「・あ・」美晴の搭乗している異邦人対策機朱雀にも、その「あ」という声が聞こえてくる。美晴が、振り返ると。
「あ。」美晴も固まる。指令室のスタッフたちも固まる。

「テープありますか?」これでチャイムでも鳴れば完璧図工だった。でも、鳴らなかった。破れてしまったのだ。八咫烏は、破れたNO99の本体一言で言うと、紙切れを持って棒立ちする。
「オマルを呼んで。」
「あ?なんだ!」荒々しい声が、帰ってくる。格納庫からだった。
「紙の修理できる?」
「紙?ふざけてるか?」すぐに無線を切られる。
「ボンドなら。」課長は、呟く。
「いや、ボンドは、強すぎる。」クマールが、課長に耳打ちする。

「あ。」佐藤は、モニターでそれを見つけて放り込む。
「ちょっと!なんで止めないの。」ハネが、指令室に入ってくる。
「え?」
「ゴミ。」
「ゴミな訳ないでしょ。早く止めさせて。」八咫烏は、近くあった古紙回収ボックスに紙切れを投げ入れようとする。ハネは、保護区まで持って行くよう指示する。

雲行きが、だんだん怪しくなり始める。
「このままだと、後20分で雨です。」真凛が、声を上げる。
「え!」指令室に動揺が、走る。
「巨大なブールシートよういできる?」すぐに、倉庫に連絡を入れる。
「あ?ブルーシートなら腐るほどあるぞ。」クマールが、すぐに答える。
「50mお願い。」
「了解。」
「おい!対異邦人用のブルーシート準備しろ!異邦人に使うだとさ。」クマールが、すぐに現場のメンバーに指示を出す。

「佐藤君!すぐに折りたたんで!」
「え!そんなことして大丈夫なんですか?!」
「濡れるよりましよ!」
「仏様にでもお祈りしたらどう。まあ、どうせ意味ないだろうけど。」美晴が、冗談を言う。
「美晴ちゃん。ばちあたるよ。」鬼刃に乗っている由美が、軽くたしなめる。
「アーホトケサマアメフラセナイデYO!」佐藤が、冗談に乗っかる。
「仏や神なんているわけないでしょ。馬鹿らしい。」美晴が、笑う。

ナイアガラ滝をひっくり返したような雨が、降ってきた。
「「「・・・・。」」」由美、美晴、佐藤は、固まる。
「佐藤君早く!ふやけてしまう前に!」周が、棒立ちしている3人に慌て周が指示を出す。紙を閃光が、包み光のわが、上下に移動する。
「Cリングです!」真凛が声を上げる。
「対象紙をNO99異邦人と指定。対処します。」周が、すかさず指示を出す。

「もういいの?」美晴が、すぐさまライフルを手に取る。
「いいわよ。狙撃を許可します。」周が、すぐに許可を出す。NO99は、攻撃をことごとくはじき返す。
「何なの!あの紙。」撃っても撃っても銃弾は、一発も通らなかった。
「NO999に高エネルギー反応です!」真凛が、声を上げる。
「攻撃来るわよ!」指令室から周が、警戒を促す。美晴と佐藤、由美は、困惑する。巨大な紙切れ一枚を前に、警戒のしようがなかった。

NO99は、8方向からの光の輪に包まれる。
「あれは・・・。」佐藤が、静かに呟く。紙には、点線が、入り始めていた。
「鶴だな・・・。」
「いや、手裏剣だろ。」曹とクマールが、議論する。NO99は、ぱくぱくに変身した。ぱくぱくに変身した。NO99は、口からレーザーを発射して、朱雀、鬼刃、八咫烏を次々に破壊していく。30秒ほどで、3機が、戦闘継続不能になる。
「他に出れる機体何の!」周が、倉庫に連絡を入れる。
「ないよ!」オマルから即座に回答が、帰ってくる。3機以外にも異邦人対策機が、あったが出動できる状態では、なかった。

「エネルギー反応消失!」モニターで監視をしていた豪が、報告する。
「まずいは!早く仕留めて!」指令室から戦況を見守っていたハネが、突然声を上げる。
「ちょっと耳元で突然声を上げないでよ!」周が、文句を言う。NO99は、勝手に千切れ始める。
「ン?自爆してるの?」
「南都空軍から作戦空域への侵入を求められています。」
「いいは、許可して。攻撃も許可するは!」指令室から空軍への攻撃許可がでる。

千切れた紙は、紙飛行機となり猛スピードで戦闘機の間をすり抜ける。ミサイルの攻撃もかわし飛んで行く。細かく千切れた紙は、四方八方へと飛んでいく。戦闘機を高速でまき全国各地へと散らばっていく。そして全国各地に広まった紙飛行機は、もう一度、ぱくぱくになり、口からレーザーを吐き全国各地を焼き尽くす。

会議室には、救出された由美、佐藤、美晴。そして、職員たちが集まる。
「この映像が、今現在のNO99の現れた場所の映像です。」会議室のスクリーンに瓦礫の山と化した、各地の映像が流れる。
「私の目の前にいる。あのNO99が、本体でその他のNO99は、全て衛星兵器です。つまり、あの目の前のNO99だけ破壊できれば、いいんです。」
「でも、どうやって、私たちの機体もうダメなんでしょ。」美晴至極真っ当なことを言う。高防の建物全体的に警告音が、鳴り響く。
「もう、到達したの!」会議室壁面を破って、NO99が姿を現す。悲鳴が、響き渡る。

〈死にたくない!自分だけでも救ってくれ!神様仏様!〉佐藤は、心の深い領域で願いを懸ける。
〈神様や仏様は、いないよ。〉佐藤が、目を開くと真っ白な空間に、坂本が椅子に座っていた。坂本は、佐藤に問いかける。
「え?ここは?」
「真理の領域だよ。」
「なんでもいいんです。助けてください!」
「君が、この真理をもし受け止めるとしたら。」
「受け止めようその真理!」

「あれは!」高防の会議室いた誰もが、もうダメだと思い。目を閉じていた目を開ける。そこには、バリアを張りNO99の激しいレーザーを受け止める白い八咫烏(白鴉)の姿があった。その機体には、佐藤が、乗っていた。白鴉は、腰を低くし体を若干後ろにひねりながら力をため、正面を向き腕をクロスさせレーザーを放ち、NO99を吹っ飛ばす。

天上月下、NO99と白鴉が、退治する。もはや残骸となった高防から職員たちが、最後の対決を見守る。NO99は、鶴に変形して口元にエネルギーをため込む。白鴉は、白と黒のカラーに変色する。そして、足に力をためる。足元には幾何学模様が、現れるその力が徐々に足裏に収束していく。NO99のレーザー発射と共に、白鴉は、NO99に向けて駆け出す。その影は鴉になり、白鴉と共にNO99目掛けて突っ込んで行く。白鴉は、NO99に飛び蹴りをくらわす。

大爆発と共に、激しい閃光が辺りを包む。

佐藤は、目を覚ます。
「気が付いたみたいね。」佐藤は、NO99との戦闘後、意識不明になり、南都大学付属病院で治療を受けていた。
「よかった・・・。」美晴が、涙目で佐藤のことを見つめる。
「美晴、ずっと病院に泊まり込んで、いたんだよ。」霙が、茶化す。
「ちょっと、いちいちそんなこと言わなくてもいいでしょ!」美晴が、照れながら怒る。
「おそらくは、NO99による精神汚染が、原因の昏睡状態にあったと思います。なので、外傷は、ありません。厚生省のガイドラインによれば、もう日常生活に復帰することも可能ですが、どうしますか?」医師が、佐藤に確認する。
「私は、問いたい。なぜ、私の前には、美少女が、いるのか?」佐藤が、突然話出す。
「やだ~、霙~、美少女二人だって!」美晴が、霙をゆする。
「ちょっと!あなたやめなさいよ!病院でうるさいわよ!」霙が、怒る。
「そう、何の魅力もない人間が、都合よく美少女にモテる。でも、それは、仕方ないじゃないか。そんな物語を否定するなら、一生つまらない、なんの魅力もない人生を受け入れろというのか?妥協にまみれた人生を、人生に妥協が、必要なら、そもそも生きる意味もないのじゃないの?妥協して自殺してもいいのではないのか?苦痛を受け入れるのが、人生の目的というならば、毎日殴られても文句言わないよな。」佐藤の目の色が、変わる。
「離れて!」周が、美晴や医師たちに離れるように指示する。

 「も~、佐藤君~何言ってるの~。」美晴が、佐藤の肩を叩こうとすると、美晴は、吹き飛ばされる。
「美晴!」周は、急いで拳銃を構える。

 「急いで、病院内の患者を避難させてください!」周が、医師に指示を出す。
「はい!分かりました!」異邦人の出現で、病院内は、パニックになる。
「あなたは、一体何者!」周が、黒い影を落とし、不気味な無表情の佐藤に問いかける。
「私は、トラーベザ星人、貴様ら愚かな人間どもが、作りだした悪の権化、神仏を破壊するために、この星に送られた。今から48時間以内にこの星の全ての人類を悪人にしてやる。猶予48時間。」
「何が、目的なの?」
「この星から仏と神の全ての情報を消し去ることだ。それで、愚かで哀れな貴様ら人類は、救われる。」
「そんなことできるわけないじゃない!」
「交渉の余地はない、我々には、人類を救わなければならないプログラムが、はしっている。そのプログラムは、もはや、書き換えられない。」

 佐藤に、本当に意識が、戻る。
「ん?生きているのか?」
「トラーベザ星人・・・。」
「ん?」佐藤は、ゆっくりと両手を上げる。佐藤の病室には、拳銃を構える警察官であふれていた。
「俺何かしました?」

 高防では、トラーベザ星人通称NO3の対策会議が行われている。
「で、この異邦人どうするの?」周が、スマホをいじりながら、ハネに尋ねる。
「そうね。今のところ大きな危害は、加えられたという情報は、ないわね。」モニターには、カードが、円形に並び宙に浮いているNO3の姿が、映しだされている。
「え、だって私吹き飛ばされたんだよ!そんな!」美晴不満の声を上げる。
「仕方ないでしょ、ロンドン議定書で、個人に対する攻撃であり、全体への攻撃などが、みられない場合は、異邦人を保護しなければならない。そう規定されてるんだから。」周が、説明する。
「現状、保護を優先させます。」周から、作戦の説明がある。

 作戦室を出て、廊下を歩きながら、美晴と佐藤が、話す。
「ねえ、あのさ。」美晴が、気まずそうに、切り出す。
「ん?」
「あの美少女たちに囲まれてってどういう意味かな?」
「は?ん?」
「ん?」少しの間、佐藤と、美晴が、見つめ合う。
「いや、俺起きたら、拳銃を構えた警察に取り囲まれていただけなんだが・・・。やっぱ俺なんかやらかした?」
「そうね!いろいろとね!」美晴が、怒りながら佐藤より速足に歩いて行く。
「おい!なんだよ!」佐藤が、美晴を呼び止めようとする。
「ごめんね・・・。」由美が、佐藤に謝り、美晴を追いかける。
「なんだよ・・・。」足早に去っていく。美晴と由美の背中を見送る。

 「由美、美晴は、まずNO3に攻撃を加えて様子見を見て、こちらでデータの分析を行います。分かった。」
「あ~今日、むしょうにむしゃくしゃしているから、駄目かも、すぐにNO3倒してしまうかも。」美晴が、周に応答する。
「駄目よ、相手の攻撃をじっくり見極めてからよ。」
「はーい!」美晴が、気のない返事をする。

 美晴が、乗る機体朱雀が、NO3に向かってライフル射撃を行う。ライフル射撃を受けたNO3のカードの表面に鏡の絵が現れる。そして、巨大な鏡がNO3を覆い、ライフル弾を弾き、由美の乗っている機体鬼刃の方に弾丸が、飛んでくる。
「ヒャッ!」
「ごめん、由美。」
「大丈夫。」
「他のカードも猛撃して!」周が、指令室から指示する。
「OK!」美晴が、他のカードにライフル射撃を浴びせる。今度が、火炎放射が、朱雀を襲う。
「あっちちち!」
「大丈夫よ。高温になっているけど、死ぬことはないは。」ハネが、朱雀のデータを見ながら、指令室から美晴に話す。

 

私は、丸々成人だ!
なぜ、都合よく美少に囲まれている
美晴を吹き飛ばす
制限時間は、48
ハートのカード全裸法律 坂本号泣 ひょっとして人を救おうとしたのではないか