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テーマ「4人の登場人物を用いた会話劇」
『スナイパークラン[SRT]』著:上田大

「レーラン、お前から見て北東に敵影3つ」
 洞窟から索敵を行うグレンからの無線報告に、僕はL96を構える。
「見えたよ。僕のいる岩場からの距離およそ700」
 スコープを覗き、確認した影は茂みの中をゆっくり進んでいる。
「僕から見えるんだったら、カレンからも見えるんじゃないかな?」
「無理や、ちょうど死角になってしもうてる。今ウチから見えるんは、レーランの頭くらいやわ〜」
 僕より200メートル後方の高台でドラグノフを構えるカレンはふざけ混じりに無線で返事を返してくる。
「振りでも撃たないでね。シュエルはどう? 見える?」
 シュエルは僕のいる岩場から北西にある崖でデグチャレフを構えている。
「あなたたちの会話中に敵は100ほど進んでるわよ。そろそろ奇襲に取り掛かりましょ。私たちは名前を売るためにこの大会に参加してるんだから」
 僕たち4人はつい先日、スナイパークランを結成したばかりだ。
 全員のメイン武器がスナイパーライフルというクランの存在をこのゲーム全体に知らしめる。それが僕たちの目的だ。
「3人とも、敵が潜伏してた奴らと合流したぞ」
 グレンからの報告に、僕はスコープの倍率を調整する。
「敵は全員で5人、奇襲をかけるなら今だ」
「了解グレン。あなたのタイミングで狙撃して。隠れた奴らは私たちが殺るわ」
 無線会話で「了解」と聞こえた3秒後、グレンのM40の狙撃音が響くと同時に敵の頭を弾丸が貫いた。
 狙撃を受け、敵は物陰へと身を潜めるが、奴らが隠れた場所は僕からみたら死角どころか丸見えだ。
 僕はそのまま引き金を引き、頭を撃ち抜く。
 隣にいたもう一人は次弾装填の前に逃げ出してしまい、僕の岩場から死角へ逃げ込んでしまった。
「そんな走り回っとったら、ウチの格好の的やでぇ〜」
 無線からカレンの声が聞こえた瞬間、ドラグノフの狙撃音が2、3回聞こえてきた。
「走っとったやつは片付けたでぇ〜」
「了解、あとは2人だけだね」
「その2人だがわりぃ、完全に見失った。多分まださっきの場所にいるとは思うんだが、弾道を読まれて顔を出してくれねぇや。レーランの方はどうだ?」
「僕からも見えない。僕たちの弾道は読まれちゃったね」
「大丈夫よ。私から見えてる。ただこの子一発しか弾が入らないから外した時のバックアップよろしくね」
 シュエルの言葉に、僕たちは「了解」と答える。
 次の瞬間、デグチャレフの爆音が響き、僕とグレンの死角になっていた小さな岩を破壊、その勢いのまま敵1人の胴体を爆散させた。
「っ! そこか!」
 瞬時に合わせた照準だったため即死まで持って行くことはできなかったが、僕の放った弾丸は生き残った最後の一人の足を飛ばす。
「最後のやつ、どうする?」
「まだ殺さないで。私たちの名前を売るいい機会よ」
 僕はハイドしていた岩場から飛び出し、サブ武器のMP5を構え、足を失った敵に近づく。近くにいた中継カメラも跡をつけてくる。
 やつに敵意はもうないらしく、落としたアサルトライフルを拾う様子はない。
「おつかれ〜」
「リーダー待ちか?」
「うん」
 物陰からライフルを担いだグレンとカレンが姿を見せる。
「みんないるわね」
 シュエルも合流し、全員が揃った。そしてシュエルはホルスター内の57を抜き、倒れ込んだ敵の頭に突きつける。
「私たちはSRT、このゲームで最強のSRクランよ。この名前、覚えておきなさい」
 シュエルはそう言い切ると、引き金を引いた。
「カメラも見てたし、これで少しは知名度上がったかな?」
「……そうだといいわね。さぁ、移動しましょ」
 57をホルスターに戻し、歩き出したシュエルの後を、僕たちは追う。
 そんな冷静を装うシュエルの頬が少し赤くなっているのを、僕は見逃さなかった。

(了)