描写技術
テーマ「ふたりのキャラクターによる会話劇」
『甘やかされる日』著:夜月彩
夜、仕事から帰ってきて自宅のドアを開けた。
「ただいまー」
「紬(つむぎ)、おかえり。今日もお疲れ様」
私を出迎えてくれたのは、『同僚と飲みに行くから遅くなる』と連絡があった彼氏の雄(ゆう)大(だい)だった。
「飲みに行かなかったの?」
「うん、断っちゃった。俺、いつも仕事で帰るの遅くなるからさ。たまには紬が帰ってくるのを待ちたかったから。ご飯出来てるけど、先にお風呂にする? もう入れるよ」
「そうしようかな。お風呂入ってくるね」
早く雄大のご飯が食べたくて、素早くお風呂を済ませてリビングへ行く。
「あ、髪濡れたままじゃん。乾かさなきゃ風邪引くよ?」
「早くご飯食べたかったから、食べ終わってからにしようと思って」
「そんなに急がなくてもご飯は逃げないから大丈夫だよ。ほら、乾かしてあげるからドライヤー持ってきて」
お言葉に甘えて、ドライヤーを持ってソファーの前に座った。
「熱くない? 平気?」
「大丈夫だよー。気持ちいい」
乾かして貰っている間に、温かすぎて眠くなってきてしまったところでドライヤーの電源を切る音がした。
「寝ちゃだめだよー。ご飯食べよう」
眠くてもご飯は食べたい。目を覚まして食卓に着き、二人で手を合わせる。
「いただきます」
「んー。鮭もお味噌汁も美味しすぎて癒やされる」
「喜んでもらえて良かった」
美味しくてすぐに食べ終わってしまった。
食器を洗おうとキッチンに立つと、リビングにいた雄大がこちらにやってきた。
「俺がやるから座ってていいよ」
「えー、お風呂もご飯も準備してくれたんだから食器くらい私にやらせてよ」
「だめです。いつも全部やってくれてるんだから、今日くらい俺を頼って」
「……じゃあ、今日はお願いします。雄大も疲れてるのにありがとう」
なんだか今日は甘やかされている気がする……。
明日は私が雄大を甘やかすんだ、と言う気持ちでソファーに寝転ぶ。
しばらくスマホで動画を見ていると、先ほどの眠気が復活してだんだん瞼が重くなってきた。雄大が終わるまでは起きていたくて、寝ないように起き上がって座り直す。
キッチンから聞こえてくる水の音が止まって、足音が近づいてくるのが聞こえた。
「お待たせ、終わったよ。もう寝ちゃいそうだね。部屋行くよ、立つ気力ある?」
「……ない。連れてって」
あまりの眠さに、雄大に抱っこして貰おうと腕を広げる。
「そうだろうと思った。ほら、おいで」
目を瞑っていると、体が浮く感覚がした。
雄大の温かい体温とゆらゆらとした浮遊感が心地良い。
寝室に着き、ベッドに下ろされたのを感じた。
「ん、雄大ありが、と……」
「おやすみ、紬。いつもありがとう」
頭を撫でられたことに安心して、眠りに落ちていった。
(了)