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 神社を経営するものは魔術が使える。幼いころをそんなこと考えていた。ポケモンがこの世に存在しないようにアニメや小説に出てくる物語は当たり前のようにフィクションで大人になって信じている人なんて危険志向を持った狂人かメルヘンチックなお方なのだろう。
 見よ。私の目の前では魔法のような不思議な力が往来している。やっぱり神社の人は魔法を使えるんじゃないか。全メディアよ。フィクションなんて存在しないのだ。
 私が夜中に二条城に行ったばかりに見つけてしまった代物だ。服装で巫女と断言できるような恰好をした女性と偶然出会った。開園時間の過ぎた二条城に人がいることはあまりに不思議だ。しかも、地面に何かの紋章が光っていて奇麗だった。
「どなた様でしょうか?」
 女性は紋章の光に照らされ、はっきりと姿が映し出される。
「あなたこそ誰ですか? 不法侵入なんて! 警察呼びますよ」
 少しおびえながら女性は言った。
「ちょ、ちょっと待ってください。ただ私は城の中で寝ていたら、閉じ込められただけで。」
「そんなの信じると思います?」
 冷ややかな目で私を見て言う。紋章は静かに消えて女性は私にどんどん近づいていく。
「警察だけは呼ばないで……私だってここに居たくているわけじゃないの。入場券を見れば何時に入ったかわかるから、ちゃんとみてよ」
「暗くて読めないわ」
 電気と呼べるものがなくて、ここは真っ暗だ。さっきの不思議な明かりをつけてほしいとおもったが、言えず私は自分のスマホをバックから取り出し、電源を付ける。明るいブルーライトに照らされ、暗闇が怖かったに私の一時の安堵をもたらす。しかし、スマホのホームに映し出された時間を見て驚愕する。
「深夜の2時!?」
「電気はついたみたいね。どれどれ、早く二条城の入場券を見せなさいよ」
 背筋が凍る中、女性に入場券を渡す。
「入場時間は4時半。それから寝てたなんて、あなた疲れてたの?」
「そうかもしれません。でも私眠った覚えがなくて……」
「何か犯罪に巻き込まれたとか。大丈夫? もしかして、あなたの処女が奪われてたり」
 私を脅かそうとしているのか。心配しているのか。わからないなこの巫女は……
「取り合えず出口がどこにあるか教えてくれませんか? 先生に怒られるかもしれないんですけど、この際、堂々と帰ったほうが心配されないかもだし」
「いいですよ。なんか見られちゃいけないもの見られちゃいましたし。それで先生に怒られるの?」
「そうですね。今修学旅行中なので。今頃は私がいないことで大騒ぎになっているかもしれません」
 見られちゃいけないものというワードは無視していこう。余計な事態を招きそうだ。そう考えて口にしないことを心にとめる。
「出口は東側に一つ。開いている門があります。でも、夜には妖怪とかお化けとか魑魅魍魎しているとか。いかにも出てきそうな雰囲気。さすが京都って感じですね」
 濁ったお茶のような色をした池も奇妙な曲がり方をした木もデカデカと建てられた城が暗闇も相まって恐怖を誘う。
「京都で有名な妖怪って何がいる?」
 あまりに静かじゃ怖いので私は仕方なく女性に話しかける。
「そうだなぁ。鵺かな」
「鵺?」
「そうそう。サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足、尻尾はヘビの妖怪だよ」
「そんなのいるわけ、どんなやつなのか見てみたいよ」
 私は笑い飛ばしながら東の門に向かう。
「そうだなぁ。あっ、あんな感じの怪物」
 女性が指を向けた先には鳥のような。でも、鳥より明らかに大きい。普通のサイズではなく、まるでポケモンのホウオウのようだ。
「後、平安時代には姿を見ると不吉なことが起こる前兆の様に考えられてたらしいよ」
 女性はしゃべり続ける。大きな鳥がこちらを見ているにも関わらず。
「ちょっと急ぎ足になろうか。鵺の逆鱗に触れる前に」
 女性を引っ張って目的地に向かう。音を立てれば殺される可能性だってある。自分の心臓の音が聞こえそうになるほどの緊迫感に包まれながら進んでいく。
 東門は開いていなかった。しかし、スタッフ専用出口は開いており、なんなく出ることができた。
「ありがとうございます。無事、外に出ることができました。」
「よかったね。そういえば名前聞いてなかったね。あなたの名前はなあに?」
 女性は私に名前を聞いてくる。
「蒲池桜です。あなたの名前は?」
「××××よ。今日は楽しかったわ」
「恐怖と命の危険しか私には感じませんでしたよ。では、ホテルに戻って先生たちを安心させないと」
「夜遅いから送ってくよ」
 ホテルまで送ってもらいました。そのあと、先生に怒られました。電話すればよかった。ただそれだけだったのになんで私は考えつかなかったんだろう。
 疲れ果てて自分の部屋に戻ったら、ルーム班の3名から心配されました。だれもしんじてくれないだろうから、二条城のこと誰にも話さないけど。5人部屋の一番窓側のベットですぐに寝た。

 次の日、二条城での殺人事件が発見された。被害者 蒲池 桜 18歳。そして、私の大親友。この5人部屋の中であの夜帰ってこなかった人だ。

 私はこの事件の犯人を知っている。なぜなら、私が殺したからだ。だってあの子は私の秘密を知ってしまったからだ。
 一生かかっても私には辿りつかないだろう。だって、私が手を下したわけじゃないから。