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 防災館に着くその前に地震にあった。
 集合時間まで暇なためどこかで時間を潰せないかと、池袋に着いて初めに思ったことだった。
 ここに来るのは初めてじゃない、むしろ良く来るしなにより近い。遊ぶところは俺のとこより多いから、暇があればちょくちょく足を運んでいた。電車を使うほどでもないし自転車ならすぐだ。漕いで何分かすればいつの間にか着いている。
 だが今日は遊ぶためではなく学校の行事。なんでもここにある防災館で、クラスメイトと一緒に訓練をするとのこと。わざわざ休日を潰してまでの登校。平日で疲れ切った体を休めたいのに容赦のない招集にはまことに遺憾である。
 まあしょうがないかと割り切って、池袋に着いて防災館に行くその前にゲームセンターや本屋など時間を潰すことに。
 クレーンゲームや対戦ゲーム、カードゲーム等色々あったがどこも休日名だけあって人が多く、空いている席がそうそう見つからなかった。クレーンゲームはそこまで多くはなかったが、そもそも景品などに興味のない俺にとってどうでもよく、あるとすれば対戦ゲームやレーシングゲームなどそういう激しく疾走感のあるものだった。
 けど埋まっているのはそういう筐体ばかり。仕方なくゲームセンターから出ようとした時だった。
 衝撃は唐突に。建物全体が崩れんばかりに揺れ動いている。
 前後左右。不規則に動く足場に立つこともままならない。
 急いで机の下へ。同時に目の前に人が倒れ込んでくる。見れば他も同様。皆何かに掴まったり台の下に隠れたりと、店内の混乱は極まっている。
 物こそ落ちてこないがそれでも大きい。
 この異常事態でどこかへ移動しようなど命を捨てるに等しかった。
 しばらくの間筐体の下へ隠れてて、収まったあとに店内を出てみるとおよそ五分ほど揺れていたらしい。
 
 約三十分後。
 先程の地震のせいでどうにも遊ぶ気にもなれず近くの公園で休んでいると、背中へと走る小さな衝撃。
「ウッ」
「オッス」
「あ、うっす」
 いたのは同じクラスメイトの友人。今日ある防災訓練に参加するためにわざわざ池袋にきた自分と同じ気の毒な人間である。
 なにせこいつは俺と違って遠い。
 クラスの中では二番目、何駅も掛けてたどり着くのに大よそ一時間半。
 そのおかげか、待ち合わせにもずいぶんと遅れてようやくやってきたようだ。
「料金高くね?」
「いや別に?」
「そりゃおまえは近いからだろ、そうじゃなくて俺。
えーと、八百円くらいかかったぞ」
「あら」
「いや、あらじゃなくて」
「だって俺に言われたって知らんよそんなこと」
「うん、まーね」
「それよりさ、さっき地震起きなかった?」
「そうそれ、それで結構電車遅れまくってさぁ、本当なら五分は早く突くことが出来たのにー」
「それでも五分だから変わらん」
「それな」
 他愛のない会話を続けながら歩いて向かっていく先は防災館。集合時間までまだ余裕はあるが、速めに着いておくに越したことはないと思っての事。友人には黙っているが、それは言えば暇つぶしに遊びに行くに違いない。何十分もここで時間が来るのを待つよりもゲームセンターなどに行って潰した方がはるかに有意義だ。
 そうなれば特に止める理由もない俺が言える事はない。
 だが、先程の地震のせいであまり屋内にいるのは気が進まない。
 ―――また起こるかもしれない。
 防災館ならまだしも、そう確実に安全が確保されてないゲームセンター本屋にいるのは気が気でない。
 だから、ここで黙って一緒に時間が来るのを待とうと防災館にたどり着き―――。
「なあ、ゲーセンいかねぇ?」
「えぇ……?」
「だって、ここにずっといてもさぁ……」
 願いはあっけなく。
 せめて違う場所にすることが俺の最大の抵抗だった。
 
 何分か経ってその後。
 何事も過ぎてって友人も満足したのか、ゲームセンターを出てようやく防災館に行くことに。友人は大分いつもの調子を取り戻して、意気揚々に中へと入っていく。だがこちらは全然。そもそも防災館自体やる気がなかったのに先程の地震のせいで意気消沈してしまっている。この状態でいけるかと心配になりながら、エレベーターに乗って目的の階まで上がっていく。
 到着すると、既に何人かの生徒が集まっており、時間ももうすぐ始まる頃だった。
 あとにもう何名かやってきてその丁度、防災館の人が出てくると隣の部屋に案内されロッカーに自分の荷物を入れて、案内された人に着いていく。
 最初にやることになったのは火事に遭った際のシミュレーションを行うことに。簡単に説明すると姿勢を低くして誘導灯に気を付けて目的地へと向かうもの。
 火事での死因の内容やそれへの対策等、丁寧に教えられて次の訓練へと向かっていく。
 消火器の使い方、人命救助。
 どれも思ったよりも簡単に事は終わったが、それでも唯一きつかったのが地震の体験だった。先程とことん味わったというのに、ここでまさか地震の体験それも震災時と同レベルでやられたもので、俺はまさに上の空。体験が終わってもまだ揺れている感覚がして気持ち悪く、ほとんど講義を聞いていなかった。
 けどようやく訓練が全て終わった後には気分ももとに戻って外に出ると友人が
「よっしゃ、ゲーセンいくかー」
 などと言ってきて、気分直しに行くかと意気込んでその日は追えた。